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世界で抹茶はどう広がっている?輸出データと活用方法から見る2026年の最新トレンド

抹茶は、茶碗で点てて味わう古くからの日本文化であると同時に、今や世界のカフェや食品メーカーが新商品を生み出すための原料にもなっています。

海外では、抹茶ラテだけでなく、フルーツを組み合わせたアイスドリンク、プロテイン飲料、スムージー、アイスクリーム、ティラミス、焼き菓子などへ用途が広がっている状況です。抹茶を入口として、日本茶の産地や製法、文化を学ぶ体験型の店舗も次々と現れています。

一方で、需要の急拡大に国内の供給が追いつかず、価格の上昇や原料不足も表面化していることも事実です。抹茶の需要が伸びているからといって、すべての茶園がすぐに碾茶生産へ転換できるわけではありません。

この記事では、2025年通年と2026年1〜6月の輸出統計を中心に、海外での抹茶取引の推移、主要市場、活用方法、茶産地が考えておきたい課題を整理していきます。これから抹茶(碾茶)の製造や抹茶ビジネスをお考えの方の参考になれば幸いです。

貿易統計の「粉末状」は抹茶だけではないことに注意

海外取引の数字を見ていく前に、統計上の注意点についてお伝えします。

日本の貿易統計では、2019年から緑茶を「粉末状のもの」と「その他のもの」に分けて集計できるようになりました。しかし、「粉末状の緑茶」には、碾茶をひいて作る抹茶だけでなく、煎茶などを粉末状に加工した粉末緑茶も含まれます。

そのため、以下では「粉末状の緑茶」を抹茶需要の動きを見るための主要な参考指標として使いますが、数字のすべてが抹茶そのものではない点にご注意ください。

なお、抹茶は、摘採前に一定期間遮光して育てた茶葉を蒸し、揉まずに乾燥させた「碾茶(てんちゃ)」を、茶臼などで微粉末にしたものを指します。一般的な煎茶を細かく砕いただけでは抹茶にはなりません。

2025年、日本茶の輸出額は約721億円へ

日本茶輸出促進協議会が財務省貿易統計などを基にまとめた資料によると、2025年の緑茶輸出額は約720.9億円でした。2024年の約363.8億円から約98%増え、ほぼ2倍になっています。

この伸びをけん引したと言えるのが、抹茶を含む粉末状緑茶です。

指標2024年2025年2026年1〜6月直近の変化
緑茶全体の輸出額約363.8億円約720.9億円約482.5億円2025年は前年比98.2%増
粉末状緑茶の輸出額約272.0億円約603.8億円約423.3億円2025年は同122.0%増、2026年上期は前年同期比99.1%増
粉末状緑茶の輸出量約5,092t約8,718t約4,409t2025年は同71.2%増、2026年上期は同19.6%増
粉末状緑茶の輸出単価5,341円/kg6,927円/kg9,601円/kg2026年上期は前年同期比約66%上昇

※輸出単価は、輸出額を輸出量で割って算出した貿易統計上の平均単価です。

2025年には、粉末状緑茶が輸出量全体の69%、輸出額全体の84%を占めました。さらに2026年1〜6月には、輸出量の73%、輸出額の88%まで比重が高まっています。

ここで注目したいのは、2026年上期の粉末状緑茶が、前年同期比で輸出量は19.6%増だったのに対し、輸出額は99.1%増だったことです。2026年上期は輸出量以上に平均輸出単価が上昇し、輸出額を押し上げました。供給制約や原料の仕入価格上昇は、その一因とみられます。

つまり、現在の抹茶市場は単純な「数量拡大」の段階ではありません。限られた原料を世界の買い手が求め、価格、品質、安定供給の条件が同時に変化している局面です。

最大市場の米国では、抹茶が商品開発の「土台」に

2025年の日本産緑茶の最大輸出先は米国でした。米国向け輸出額は全体で約293.4億円、そのうち粉末状緑茶は約254.2億円で、米国向け輸出額の87%を占めています。

2026年1〜6月の米国向け粉末状緑茶も約171.9億円に達しました。米国では抹茶が日本食レストランや茶専門店だけで提供される商品ではなく、一般的なカフェで選べる飲料へと広がっているのです。

用途も「抹茶ラテ」一種類ではありません。米スターバックスは、2023年に4種類だった抹茶ドリンクの定番ラインアップが、2026年2月までに3倍になったと発表しています。商品例には、プロテインを加えた抹茶、ベリーやバナナブレッドの風味を組み合わせたアイス抹茶、抹茶を使ったローフケーキなどがあります。

同社は2025年に無糖の抹茶パウダーへ切り替え、シロップ量を調整できるようにしました。この事例からは、海外の抹茶商品が次のような方向へ広がっていることが読み取れます。

  • 冷たい抹茶ラテやフローズンドリンク
  • ベリー、柑橘、ピスタチオなどとの組み合わせ
  • プロテインや植物性ミルクを加えた商品
  • 甘さを消費者が調整できるカスタマイズ
  • ケーキ、アイス、ティラミスなどのデザート

ジェトロの米国調査でも、抹茶ラテに加えて、抹茶アイスや抹茶ティラミスの認知が高まっていると報告されています。鮮やかな色、うま味、健康的なイメージ、コーヒー以外の選択肢という複数の価値が、抹茶人気を支えています。

欧州では、カフェから菓子・中食・スムージーへ

欧州でも粉末状緑茶の取引は伸びてきています。2025年の国別輸出額では、ドイツが米国に次ぐ第2位でした。ドイツ向けの粉末状緑茶は、2025年に約47.0億円、2026年1〜6月にはすでに約45.9億円となっています。

ジェトロの欧州市場調査では、ドイツのカフェで緑茶や抹茶が扱われるほか、タピオカティー、ケーキ、菓子パン、焼き菓子、餅アイス、グリーンスムージーなどにも抹茶が使われていると紹介されています。

ここでも抹茶は、伝統的な飲み方だけでなく、食品や飲料に風味と色を加える業務用原料として広がっている状況です。一方、欧州向けでは残留農薬基準や有機認証、表示、品質管理など、輸出先の条件に対応する必要があります。「抹茶であれば売れる」というより、用途に合う品質と必要な証明をそろえられるかが重要になります。

ASEANでは、ブームから日常消費へ

2025年のASEAN向け日本茶輸出量は約2,495tで、EU加盟国向けの約1,939tを上回りました。輸出額は約100.3億円で、前年の約50.8億円からほぼ倍増しています。

面白いのは、ASEANの中でも抹茶の受け入れ方が国によって異なることです。

市場主な傾向抹茶の使われ方・重視点
タイ抹茶が日常的な選択肢へ粉末商品、RTD、ミルクや甘味を加えたアレンジ飲料、専門カフェ
シンガポール品質志向抹茶と煎茶の双方が支持され、飲みやすさや苦渋味の少なさを重視
ベトナム日本茶全体が食事場面へ浸透抹茶だけでなく煎茶、玄米茶なども日常飲料として受容

ジェトロは、タイでは2025年の爆発的なブームを経た後も抹茶が日常消費として定着し、茶の入れ方や背景文化を紹介するワークショップなど、体験型の消費も広がっていると報告しています。

同時に、産地表示の不一致、他国産原料との混在、品質と価格のずれも課題として挙げられています。市場が成熟するほど、「日本産」「高品質」と書くだけでなく、原料の出所、栽培、加工、品質を説明できるトレーサビリティが重要になります。

香港では小口商品と外食用途が拡大、他国産との競争も

香港では、抹茶ラテ、アイスクリーム、プリン、焼き菓子などに抹茶が使われています。ジェトロの2026年レポートによると、日本から香港へ輸出された3kg以下の小口包装の抹茶等は、2024年に約111t、約6.3億円で、数量・金額とも前年を上回りました。

一方、日本産抹茶の価格高騰と供給不足を受け、安定供給を優先して中国産へ切り替えるレストランチェーンも現れていると報告されています。

この動きは、海外需要が強ければ日本産抹茶が無条件に選ばれ続けるわけではないことを示しています。価格だけで競うのではなく、産地、味、色、栽培方法、安全性、環境への配慮など、購入する理由を明確にする必要があるでしょう。

国内では碾茶生産が増加、それでも供給には時間がかかる

需要拡大を受け、日本国内の碾茶生産も増えています。農林水産省の2026年7月資料によると、2025年の碾茶生産量は6,278tで、2014年の約3.2倍になりました。2025年の荒茶価格は、碾茶が全茶期平均8,562円/kgで、煎茶の約4.9倍です。

ただし、煎茶から碾茶への転換は、そもそも製造工程から変える必要があります。

  • 摘採前の被覆に対応する栽培管理
  • 碾茶に適した摘採方法と品質管理
  • 茶葉を揉まずに乾燥させる碾茶炉などの加工設備
  • 保管、仕上げ加工、粉砕までを含む供給体制
  • 輸出先の基準に合う防除・記録・認証
  • 長期的に購入する取引先との関係

上記のような要素を、地域全体で整える必要があります。現在の高価格だけを基準に転換を決めると、設備投資後に需給や価格が変化するリスクもあります。栽培、加工、販売を分けず、出口から逆算して計画することが大切です。

2026年の抹茶トレンドをどう読むか

今回確認した国内外のデータから、2026年の抹茶市場には七つの流れが見えてきました。

  1. 日本茶輸出の中心が、抹茶を含む粉末状緑茶になっている
  2. 2026年は数量以上に輸出単価が上昇している
  3. 最大市場は米国で、欧州とASEANにも需要が広がっている
  4. 夏向けのアイス飲料、フルーツ、植物性ミルクとの組み合わせが増えている
  5. 菓子、パン、アイス、スムージーなど業務用原料としての用途が拡大している
  6. ブームの次の段階として、品質、産地、文化体験が重視され始めている
  7. 供給不足を背景に、他国産への切り替えや品質表示の課題も生じている

重要なのは、「需要があるか」だけでなく、「どの品質を、誰に、どの用途で、どのくらいの期間供給するか」を考えることです。飲用向けの高品質抹茶と、ラテ・製菓向けの原料では、買い手が求める色・味・価格・ロットが異なります。

品薄相場の先では「品質」と「説明力」が問われる

現在の抹茶市場では、供給不足を背景に、本来の品質差が価格へ十分に反映されず、品質に対して割高な商品が流通しやすい状況も生じています。ジェトロがタイの輸入事業者に行ったヒアリングでは、品質水準と価格が大きく乖離した商品、表示内容の不一致、他国産茶との混在などが課題として挙げられています。

一方で、海外市場を「抹茶に詳しくない消費者へ売る場所」と考えることはできなくなっています。知識の深さを国籍だけで語ることはできず、海外の専門店、輸入事業者、熱心な消費者の中には、産地、原料の出所、加工方法、味や用途の違いを詳しく調べて商品を選ぶ層が育っているからです。タイでは、抹茶を飲むだけでなく、入れ方や背景文化を学ぶワークショップも一般層に広がっています。

今後、供給不足が緩和されて選択肢が増えれば、価格に見合わない品質の商品はもちろん、産地・栽培・加工を説明できない商品は選ばれにくくなる可能性があります。世界的な需要の高まりは大きなチャンスですが、現在の高値だけを見て生産量を増やすのではなく、数年先でも選ばれる高品質な抹茶を安定して供給できる体制を整えることが重要です。

そのためには、茶園での被覆管理・品種と摘採時期・碾茶への加工・保管・粉砕・残留農薬基準への対応・栽培・加工記録までを一つの流れとして考える必要があるでしょう。抹茶市場は、単なる品薄相場から、品質と価格の整合性、安定供給、説明力を競う市場へ移っていくと考えられます。

営農型太陽光を、高品質な碾茶づくりとブランド価値へ

高品質な抹茶づくりは、原料となる碾茶の栽培から始まります。碾茶では摘採前の適切な遮光が必須条件ですが、単に暗くすればよいわけではありません。農林水産技術会議の研究では、被覆期間によって品質と収量にトレードオフがあり、被覆開始後20日程度で両者のバランスが取れることや、低遮光資材の後に高遮光資材を重ねる二段階被覆によって、品質向上と収量確保を両立できることが示されています。

TEA ENERGYでは、営農型太陽光の専用架台を碾茶栽培の遮光棚として活用し、二段階被覆にも対応できる仕組みを提案しています。発電設備の架台を、適切な遮光管理を行うための農業設備としても利用することで、高品質な碾茶づくりに必要な環境を整えやすくなることが特徴です。

ただし、遮光棚さえあれば抹茶の品質が自動的に高まるというわけではありません。品種、地域の気象、畝の向き、パネル配置、遮光率、被覆時期、摘採時期などを踏まえ、農業を起点に設備を設計し、栽培結果を確認していく必要があります。

もう一つの可能性が、「再生可能エネルギーを生み出す設備の下で育てられた抹茶」というブランドストーリーです。品質が同程度の商品であれば、産地や味だけでなく、農地を維持しながら再生可能エネルギーを生み出していることが、他の茶園との差別化要素になり得ます。環境配慮や持続可能な調達を重視する海外バイヤーや食品企業に対し、栽培背景まで含めて説明できることは、将来のブランド価値につながる可能性があります。

この価値を信頼してもらうには、イメージだけで「環境にやさしい」と表現するのではなく、発電設備と茶園の関係、栽培・加工の記録、環境への取り組みを確認できる情報として示すことが重要です。「営農型太陽光の下で栽培した」という事実に、品質とトレーサビリティが伴ってこそ、長く選ばれる抹茶になります。

TEA ENERGYが取り扱う営農型太陽光は、基本的に企業が発電事業者となり、茶農家は営農に集中することが特徴です。発電による売電収入の一部を営農者へ還元することで、農家自身が発電設備を所有・運営することを前提とせず、高品質な碾茶づくりと茶園での営農継続を支える体制を目指しています。

まとめ 抹茶市場は「量」から「供給力と説明力」の競争へ

2025年の粉末状緑茶の輸出額は約603.8億円となり、2026年上期も前年同期の約2倍の金額で推移しました。米国を中心に、欧州、ASEAN、中東などへ市場が広がり、用途もラテからフルーツ飲料、プロテイン飲料、菓子、アイス、スムージー、文化体験へと多様化しています。

一方で、2026年上期は輸出量より輸出額の伸びが大きく、価格上昇と供給制約が鮮明です。現在は品質に対して割高な商品も流通しやすい状況ですが、市場が成熟するほど、品質と価格の整合性、産地、加工方法、トレーサビリティが問われます。海外市場で長く選ばれるためには、単に生産量を増やすだけでなく、用途に合う品質、安定供給、産地情報、栽培・加工の記録、環境への配慮を説明できる体制が欠かせません。

営農型太陽光の架台を碾茶用の遮光棚として活用し、高品質な抹茶づくりの環境と、再生可能エネルギーを生み出す茶園という価値を両立させることは、TEA ENERGYが目指す取り組みの一つです。品質と環境情報の両方を示せる抹茶を育てることが、世界的なブームを持続可能な茶園経営へつなげる鍵になります。

茶園を今後も維持しながら、碾茶栽培や営農型太陽光の可能性を検討したい方は、TEA ENERGYの営農型太陽光発電をご覧ください。個別の茶園で検討できるか知りたい方は、お問い合わせページよりご相談ください。

参考資料

※本記事は2026年8月6日時点で公表されている資料を基に作成しています。貿易統計の「粉末状緑茶」には、抹茶以外の粉末緑茶も含まれます。個別の価格、取引条件、認証・輸出要件は、品種、品質、用途、輸出先、契約時期などによって異なります。営農型太陽光の導入による茶の品質・収量への影響も、品種、地域、設備設計、遮光方法などによって異なります。

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