営農型太陽光発電をめぐる議論では、「遮光率を何%にするか」が注目されています。茶農家にとっても、日射をどの程度確保できるかは、栽培計画に関わる重要な問題です。
ただ、設備の遮光率が分かれば、その下で農業が適切に続けられるかまで判断できるのでしょうか。
TEA ENERGYは、遮光率を設計段階の重要な指標として使いながら、収量・品質・農作業・農業収支を継続して確認することが必要だと考えています。その考え方を深めるうえで参考になるのが、フランスの営農型太陽光発電制度です。
フランスでは、比較対象となる「対照区」などを用い、農業生産の実態を確認する仕組みが設けられています。本記事では現地の法令を読み解き、日本の茶園でどのような評価を積み重ねるべきかを考えます。
※制度に関する情報は2026年9月10日時点で確認した公表資料に基づきます。フランスについては、2024年に具体化された制度のうち、主に露地の作物栽培に関する規定を取り上げます。温室・畜産には別の評価方法が定められています。
設計上の遮光率と、作物が受ける光を分けて考える
最初に把握しておきたいのが、「遮光率」という言葉の意味です。設備の面積から算出する割合と、実測した光の減少割合を区別して読んでいきましょう。
日本の2026年7月公示の基本方針改正案では、遮光率を、設備直下の農地面積に対する発電設備の投影面積の割合として扱っています。つまり、面積から算出する設計上の数値です。〔1〕
一方、フランスの「被覆率(taux de couverture)」は、通常の使用条件における太陽電池モジュールの最大地上投影面積を、法令で定義された対象農地の面積で割った値です。こちらも、作物に届く光を直接測定した数値ではありません。〔2〕
実際の太陽光パネル下の茶園では、時刻や季節によって影の位置が変わります。パネルの高さ、向き、配置によっても、日なたと日陰の分布は異なるでしょう。したがって、投影面積による遮光率が50%でも、「すべての茶樹が、生育期間を通じて一律に50%少ない光を受ける」という意味にはなりません。
碾茶用の被覆資材も使う場合は、設備の投影面積による割合と、資材の遮光性能を分けて扱う必要があります。両方の数字を足すだけでは、茶樹が受ける光の量を説明できません。
農業への影響を検証するなら、どれだけ覆ったかに加え、いつ、どの場所で、どれだけ光が届いたかを確かめることが出発点になります。
フランスが求めるのは、農業への具体的な貢献
フランスのエネルギー法典は、営農型太陽光発電に対し、十分な農業生産と持続的な農業収入を確保しながら、次のいずれかのサービスを農地にもたらすことを求めています。
- 土壌の性質や収量など、農業生産に関わる条件の改善
- 気候変動への適応
- 気象災害などに対する保護
- 動物福祉の改善
さらに、農業が主たる活動であること、設備を撤去して元の状態に戻せることも条件です。いずれかのサービスに重大な悪影響を与える場合などは、営農型と認めない規定もあります。上の四項目は、法令の内容を読みやすく要約したものです。〔3・7〕
この枠組みから読み取れるのは、発電設備が農地の上にあるという外形に加え、「その農業に、どのような役割を果たすか」を問う姿勢です。
茶園なら、暑熱への対応や栽培した製品の品質などが検証課題になります。ただし、効果は栽培条件ごとに確かめる必要があります。「影があるから暑熱対策になるはず」という期待を、実績として扱うことはできません。
「対照区」で、設備がない場合と比較する
設備の効果を考えるとき、前年の収穫量と比べるだけでは、天候の違いが混ざってしまいます。同じ年に近い条件で栽培した区画があれば、比較の手がかりが増えるでしょう。
フランスの「対照区(zone témoin)」には、主に次の条件があります。
| 項目 | 法令上の主な条件 |
|---|---|
| 面積 | 設備設置面積の5%以上。ただし1haを限度とする |
| 場所 | 営農型太陽光設備の近くにある |
| 影の条件 | 太陽光設備や、影をつくる構造物・樹木がない |
| 比較条件 | 土壌・気候条件が同等で、設備下の農地と同じ条件で栽培する |
設備下と対照区の結果は、農場や地域の過去の生産データとの整合性も定期的に確認します。〔4〕
ただし、すべての案件に同じ形の対照区が必要というわけではありません。たとえば、被覆率40%未満で、技術的に対照区を設けられないことを説明できる場合には、所定の委員会の意見を踏まえた行政の許可により、地域の生産実績や過去のデータを使う例外が認められ得ます。対照区を備えた類似設備のデータや、省令のリストに位置づけられる実証済み技術を用いる場合についても、条件付きの例外規定があります。〔5〕
日本の茶園でも、比較区画を用意するなら、条件の選び方を説明できることが重要です。たとえば、設備下に若い茶樹、比較区に成園を使ったり、片方だけ管理を手厚くしたりすれば、設備の影響を読み取りにくくなってしまいます。
「比較した」という事実だけでなく、比較が公平だったかまで示す必要があると考えます。
収量は原則「対照区などの平均単収の90%を超える」こと
フランスの作物栽培に関する基本的な収量基準は、設備を設置した対象農地の平均単収が、対照区またはそれに代わる参照データの平均単収の90%を超えることです。単収とは、単位面積当たりの収量のことです。フランスでは1ha当たりで比較し、条文の表現は「90%以上」ではなく「90%超」となっています。〔4〕
平均の計算に用いる期間も、確認したい点です。2024年7月5日付の省令では、設備完成後の最初の5年間は、工事の完了・適合を証明する届出以降の平均単収を使います。その後は、直近5年間の単収から最高値と最低値を除き、残る3年分の平均を用いる方法です。〔6〕
複数年で評価する考え方は、日本の茶栽培にも参考になります。収穫量が多かった年だけを取り上げれば、設備の効果を実際より大きく見せてしまうおそれがあります。逆に、地域全体が不作だった年の数字だけでは、設備が原因なのか判断しにくいでしょう。
一番茶、二番茶などの茶期別の記録と年間の合計を残し、気象や更新作業の履歴も一緒に確かめる。そうした積み重ねが、農家にも行政にも説明しやすい評価につながります。
品質向上を評価する余地はある。ただし実証と行政判断が前提
今回のテーマで、とくに注目したいのが品質の扱いです。
フランスでは、設備によって農産物の品質に顕著で実証可能な改善がもたらされる場合などに、県における国の代表者であるpréfet(プレフェ)が、収量の基準割合を引き下げられます。品質の比較対象は、既存の生産なら過去の参照値、新たな生産なら対照区や代替の参照データです。〔4〕
これは、「高く売れれば、どれだけ収量が減ってもよい」という制度ではありません。品質の改善を示す根拠と行政の判断が必要であり、農業の継続性など、ほかの条件も残ります。
お茶に当てはめて考えると、香味、色、用途への適合性などを、収穫量とともに評価する視点が得られます。一方、販売単価が上がった理由は、品質の改善だけとは限りません。相場の上昇、販売先の変更、契約条件の違いも考えられます。
当社としては、品質の記録と販売実績を両方残し、価格の変化だけで品質向上を説明しないことが大切だと考えます。品質を重視する主張ほど、比較方法を丁寧に示す必要があるでしょう。
農業収入と発電収入を分け、運転後も確かめる
フランスでは、農業収入の持続性も確認します。基本となるのは、一般的な経済状況や農場の事情の変化を考慮したうえで、農業経営体の設置後の平均的な農業収入が設置前を下回らないことです。新規就農者については、地域の同種の農場との比較を用います。〔7〕
この「農業収入」は、農産物の売上額そのものではありません。農業の経営成績を示す会計指標を基礎に、営農型太陽光設備から得る直接・間接の収入を差し引き、必要に応じて労働報酬と関連する拠出金を加えるなどして算定します。〔6〕
運転後の追跡調査では、収量と品質、農業収入などを確認します。農業・気象・発電に関するデータは、フランスの環境・エネルギー管理庁ADEMEへ年次で提出する仕組みです。追跡調査報告の作成は、事業やその審査・運営の関係者が担当できないと定められています。〔8・9〕
営農型太陽光では、発電による収益が農業経営を支えることも期待できます。ただ、その効果と、農業自体の成績は分けて把握したいところです。
お茶の収量や採算が悪化していても、売電分を合算した総収入だけを見ていると、農業側の問題を見落とす可能性があります。農業と発電の収支をそれぞれ確認し、そのうえで経営全体を評価する方法が有用だと考えます。
フランスにも被覆率の規定があり、日本にも収量・品質の基準がある
ここまで読むと、「フランスは収量と品質、日本は遮光率で評価している」と受け取られるかもしれません。ただし、実際の制度は、両国とも複数の指標を組み合わせたものです。
フランスにも設備側の数値規定があります。所定の実証済み技術に関する省令の対象ではない設備で、設備容量が10MWピークを超える場合には、被覆率40%以下という条件が設けられています。ここでいうMWピークは太陽電池の公称最大出力に基づく容量であり、実際の発電量を表す数値ではありません。
また、設備によって耕作できなくなる面積は、設備設置範囲の総面積の10%以下とし、高さや列間隔についても通常の農作業を可能にすることが求められます。「フランスでは収量さえ保てば、自由にパネルを増やせる」という説明は正確ではありません。〔10〕
一方、日本の現行ガイドラインも、収量と品質を確認する仕組みです。原則として、同じ作物について、同じ年産の当該市町村内の平均的な単収に比べておおむね2割以上減少する場合や、品質に著しい劣化が生じるおそれがある場合などに該当しないことを確認します。遊休農地の再生利用や、地域で栽培されていない作物などには、別の扱いがあります。〔11〕
したがって、フランスの「90%超」と日本の「おおむね2割以上の減収」を並べ、数字だけで厳しさを比較することも適切ではありません。比較対象や平均の取り方が異なるためです。
日本の2026年7月24日公示の基本方針改正案で示された数値は、遮光率30%未満です。遮光率での判定が難しい設備については、作物の生育期間を通じて、圃場のすべての地点で日射量の減少率を20%未満とする別の条件も示されています。同時に、公的機関・大学等の複数年の試験結果に基づく科学的根拠と、国・都道府県の助言を踏まえ、市町村が特例を定める仕組みも示されています。〔1〕
この部分で紹介したのは、意見募集に付された案の内容です。9月10日の確認時点で、当該案件ページに結果公示は掲載されていませんでした。個別の申請では、最終的に公布・公表された規定や運用資料を確認する必要があります。〔12〕
議論すべきなのは、設計上の数値と、現地で確かめる農業の成績をどう組み合わせるかです。作物や地域の違いを評価に反映するには、比較できる実証データを蓄積する必要があります。
茶園では「何を比較するのか」を先に決める
ここからは、日本の茶園で比較・記録を行うためのTEA ENERGYの提案です。フランスの法定要件や、日本で一律に求められる試験方法を示すものではありません。申請や実証に用いる場合は、目的に応じて行政機関や研究機関と評価方法を相談しましょう。
碾茶向けの栽培では、通常の生産方法にも被覆が含まれます。フランスの条文は、対照区に影をつくる構造物などを置かないことを求めていますが、日本の碾茶栽培で何を比較するかは、通常の被覆工程も踏まえて検討する必要があります。
まず、「パネルの影響を知りたい」のか、「営農型の導入に合わせた茶種転換も含めて経営を評価したい」のかを明確にしましょう。
パネルの影響を調べる場合
同じ茶種をつくる区画同士で、品種、樹齢、土壌条件、施肥、防除などをできるだけそろえ、太陽光設備の有無を比較する方法が考えられます。摘採日をそろえるか、芽の生育段階をそろえるかも、試験の目的に合わせて事前に決めておきましょう。
碾茶なら、設備のない区画にも通常の碾茶栽培に必要な被覆を行い、時期や資材などを記録する方法が考えられます。設備下の被覆方法も変える試験では、パネルと被覆の両方の影響を含む比較になるため、その変更内容を明示することが重要です。
設備下で新しい品種を植え、比較区では従来の品種を使った場合、差には品種の影響も含まれます。その結果だけから、「太陽光設備によって品質が上がった」と結論づけることはできません。
茶種転換を含めた経営を評価する場合
煎茶から碾茶への転換では、製造方法、加工設備、販売先なども変わり得ます。生葉の収穫量だけを比較しても、経営全体の変化を説明しきれません。
販売できた製品の数量、品質、加工費、追加の作業時間などを含め、農業側の採算を確認する必要があります。新植した茶園は、樹齢や収穫開始までの期間も記録し、同じ生育段階の茶園との比較と、導入前後の経営の変化を分けて評価したいところです。
茶農家が残したい六つの記録
評価項目を増やすだけでは、現場の負担が大きくなります。まずは出荷記録や作業日誌を整え、光や品質の詳しい測定は、研究機関などと協力して段階的に追加する方法が現実的でしょう。
| 記録する項目 | 茶園で確認したい内容 |
|---|---|
| 光の条件 | 設備配置、被覆の開始・終了日、資材、茶株面に届く光の時間・場所による違い |
| 収量 | 茶期別・年間の生葉量、比較に使う面積、製品の出来高、出荷できなかった量 |
| 品質 | 色、香味、用途別の評価、必要に応じた成分分析、製造条件と保管条件 |
| 気象と生育 | 気温・葉温、土壌水分、被害の有無、樹齢、更新や生育の記録 |
| 農作業 | 摘採・防除・被覆などの作業時間、機械の動線、支柱周辺の管理負担 |
| 農業収支 | 販売数量・単価、資材費、加工費、労働費など。発電に由来する収入は別に記録 |
光を詳しく調べるなら、見た目の明るさや一度だけの測定で判断せず、光合成に関わる光を測る方法も含め、測定位置と期間を専門家と決めることを勧めます。茶園の中でも条件の異なる複数の場所を測れば、平均値だけでは分からない偏りを検討できます。
収量では、面積の取り方を統一することも大切です。収穫できた部分だけを分母にすると、支柱周辺などで生産に使えなくなった面積の影響が隠れるおそれがあります。栽培面積と設備を含む区画全体の面積を併記すると、結果を読み取りやすくなるでしょう。
品質を比較するときは、蒸し・乾燥などの製造工程や保管条件もそろえたいところです。試料名を伏せた官能評価を組み合わせれば、設備への期待が評価に影響することを抑える工夫になります。
良かった年だけでなく、日照の少なかった年や管理が難しかった年も記録しましょう。そうした記録は、導入に適した条件と、見直すべき条件の両方を検討する材料になります。
TEA ENERGYが目指す、農業の成果を説明できる営農型太陽光
日本の実証事例も、茶園での遮光を考えるための材料です。農林水産省が公表した静岡県島田市の実証概要には、品種「かなやみどり」について、遮光率50%程度でも収量や品質に影響がないとの結果と、凍霜害の発生が抑えられる傾向が記載されています。ただし、特定の圃場・品種・設備条件による結果であり、すべての茶園や碾茶栽培に共通する最適値を示すものではありません。また、この概要資料だけでは、品質評価の詳しい方法や統計的な検定の結果までは確認できません。〔13〕
TEA ENERGYでは、お茶に特化した営農型太陽光発電として、農業機械に合わせた架台設計や、専用架台を碾茶栽培の被覆に活用する仕組みを提案しています。〔14〕
こうした設備を生かすには、栽培目的に適した品種を選び、パネルの配置と被覆時期を組み合わせ、作業しやすい茶園をつくることが重要です。設備を建てる前に、「何を、どの品質で、どの販売先に届けるか」を明確にしたいと考えています。
制度の運用についても、当社は次の三点を重視します。
- 設計時の基準と、運転後の実績確認を組み合わせること。 遮光率の確認に加え、農業が適切に続いているかを確かめる仕組みが必要です。
- 作物別・地域別の実証を、利用しやすい形で蓄積すること。 小規模な農家も根拠を示せるよう、試験方法や記録様式の共有を進めることが望まれます。
- 問題が見つかったときの改善まで考えること。 収量や品質が低下した場合には、栽培管理、被覆方法、設備配置などの見直しにつなげる必要があります。
フランスの制度から学びたいのは、対照区の設け方、収量の比較方法、品質の証明、農業収入の確認を一体として考える姿勢です。
遮光率は、営農型太陽光を評価する大切な指標です。その指標に農業の実績を重ね、茶農家にも地域にも説明できる事業を育てていくことが、長く営農を続けるための土台になると考えます。
TEA ENERGYでは、茶園での営農型太陽光発電や碾茶栽培への転換について、導入の考え方をご案内しています。現在の品種、栽培方法、使用する農業機械、目指すお茶づくりについて、お問い合わせページからお聞かせください。
出典・参考資料
本文中の〔番号〕は、以下の資料に対応しています。確認日は2026年9月10日です。フランス法令の説明は原文の要旨を日本語で整理したもので、公式訳ではありません。
- 農林水産省・農山漁村再エネ法に基づく基本方針の改正案概要 — 遮光率30%未満、日射量による別条件、市町村特例の案。PDFの4・7ページ。
- フランス・エネルギー法典R314-119条 — 被覆率の定義。
- フランス・エネルギー法典L314-36条 — 農業への貢献、農業の主たる活動性、可逆性。
- フランス・エネルギー法典R314-114条 — 対照区、平均単収90%超、品質改善等による例外。
- フランス・エネルギー法典R314-115条 — 対照区に代わる参照データなどの例外条件。
- フランス・2024年7月5日付省令3条 — 平均単収と農業収入の算定方法。
- フランス・エネルギー法典R314-108~123条 — 農業へのサービスの具体化、農業収入、確認・報告の枠組み。
- フランス・2024年7月5日付省令4条 — 追跡調査の内容とADEMEへの年次データ提出。
- フランス・2024年7月5日付省令(とくに6条) — 追跡調査報告等の作成者の独立性。
- フランス・エネルギー法典R314-118条 — 農業利用できなくなる面積、作業空間、一定の設備の被覆率上限。
- 農林水産省「営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドライン」 — 日本の単収・品質等の確認基準。PDFの4~6ページ。
- e-Govパブリック・コメント(案件番号550004383) — 2026年7月24日公示の改正案と意見募集の状況。
- 農林水産省「営農型太陽光発電 高収益農業実証事業の概要」 — 静岡県島田市の茶の実証はPDFの2ページ。
- TEA ENERGY「営農型太陽光発電」 — 茶園に合わせた架台設計と碾茶栽培の被覆への活用。
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