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抹茶ブームを長く続く取引へ――茶畑単位の中長期契約から考える安定供給

海外で抹茶の需要が広がるなか、茶園の将来を考えるうえで、碾茶栽培への転換や有機栽培、改植は重要な検討テーマです。新しい生産に取り組むときには、現在の価格に加え、数年先の販売先や栽培を続ける体制も考えておきたいところではないでしょうか。

「来年も同じ相手に販売できるだろうか」「求められる品質と数量に応えられるだろうか」。こうした問いを考える材料として、静岡県の企業が展開する、茶畑単位の中長期契約による抹茶供給の仕組みがあります。

この記事では、2026年9月に公表された事例を入り口に、茶農家が買い手と確認したい条件、有機栽培への準備、そして営農型太陽光を活用した茶園づくりについて解説します。

静岡から発信された、茶畑単位で抹茶を供給する仕組み

2026年9月11日、鈴与グループは、鈴与商事によるBlue Farm株式会社への出資を発表しました。Blue Farmは静岡県浜松市に本社を置く企業です。[1]

発表資料によると、同社の「MatchaaS」は、有機JAS認証のもとで管理する茶畑を、抹茶を使用する企業の専用生産基盤として確保するサービスです。顧客の年間必要量から茶畑面積を算定し、栽培・摘採から加工・品質管理までを一元的に担う仕組みと説明されています。

茶畑単位で中長期契約を結び、供給量と価格の安定を目指すとともに、生産工程のデータによって原料の産地や栽培方法を確認できるようにする取り組みです。

この事例から茶農家が参考にできるのは、買い手が必要とする抹茶の条件を、茶畑の管理や加工の計画までさかのぼって考える視点でしょう。なお、発表資料は事業の仕組みを紹介したものであり、導入農家の所得増加や供給安定の実績を検証した報告ではありません。

輸出が伸びる今こそ、販売先と生産計画を結び付ける

需要の拡大は、茶産地にとって大きなチャンスです。そのチャンスを生かすには、売り先の用途と、茶園で実現できる生産条件を具体的に合わせる必要があります。

輸出額の増加と、個々の茶園の利益を分けて考える

農林水産省の「茶をめぐる情勢」(2026年7月)によると、2025年の緑茶輸出額は約721億円で、過去最高となりました。同資料は、抹茶を含む粉末茶の需要拡大を背景として挙げています。この金額は緑茶全体の輸出額であり、抹茶だけの金額ではありません。[2]

市場の拡大を受けて生産を増やす場合も、農家の手元に残る利益は、販売単価、収量、作業時間、資材費、加工費などによって変わります。有機栽培への転換や改植を伴うなら、その準備期間にかかる費用も見込まなければなりません。

まず整理したいのは、「どのような条件で、どれだけ販売できれば、栽培を続けられるか」です。販売の見通しと生産原価を並べることで、必要な面積や設備投資の規模も考えやすくなります。

買い手が使う場面から、必要な品質を確認する

同じ抹茶でも、飲用、ラテ、菓子など、用途によって買い手が重視する点は異なる場合があります。取引を検討するときは、色、香り、うま味、渋味といった評価項目に加え、実際の使い方を確認しましょう。

たとえばラテ向けであれば、抹茶だけでの評価と併せて、使用するミルクや配合で試してもらう方法が考えられます。製菓向けなら、加工後の色や風味について、買い手と評価方法をすり合わせておくと有用です。

「高品質」という言葉を、取引相手と共有できる具体的な基準へ置き換えること。 それが、品種、摘採時期、被覆、加工方法を検討する出発点になります。

中長期契約で茶農家が確認したい七つの条件

中長期の取引には、販売の見通しを立てやすくなる利点が期待できます。ただし、その効果は契約内容次第です。以下は、今回の事例を踏まえて整理した一般的な確認項目であり、Blue Farmの実際の契約条項を示すものではありません。

確認項目買い手と話し合いたい内容
①納めるもの生葉、荒茶段階の碾茶、仕上げた碾茶、粉末の抹茶のうち、どの段階で引き渡すか
②数量と時期年間数量、茶期ごとの内訳、納期、需要が増減した場合の変更方法
③品質と検査見本、評価項目、検査方法、判定する人・機関、基準から外れた場合の扱い
④価格と見直し単価の決め方、品質差の反映、資材費や相場の変動を踏まえた協議の時期
⑤不作時の対応天候や病害虫で不足が見込まれる場合の連絡、数量変更、代替原料、責任の範囲
⑥費用と支払い加工・検査・保管・運送・認証の費用負担、代金の支払時期
⑦期間と終了条件契約期間、更新、解約、専用設備や改植への投資が残る場合の扱い

「長期契約」と「長期間の固定価格」は同じではない

契約期間と価格の決め方は、分けて確認したい事項です。長期の取引でも毎年価格を協議する設計は考えられますし、一定期間の固定価格を採用する場合もあるでしょう。

価格を固定すると、収入の見通しを立てやすくなる一方、資材費の上昇や市況の変化への対応が課題になります。価格を見直す場合には、何を基準に、いつ協議するのかをあらかじめ明確にしておくと安心です。

提示単価だけで判断せず、品質評価や各種費用を含めた実際の受取額を確認することが大切になります。

作柄が変わったときの相談方法まで決めておく

茶園の収量や品質は、天候などによって変動します。契約を結んでも、その変動自体がなくなるわけではありません。

出荷直前になって数量不足が分かると、買い手も対応が難しくなります。生育状況をいつ共有するか、不足の見込みをどの段階で知らせるか、代替原料を使う際に誰が品質を確認するかまで話しておきたいところです。

また、一つの取引先への依存が大きくなる場合は、その企業の需要が減ったときの影響も検討しましょう。専用の品種や加工仕様に合わせるほど、他の販売先へ切り替えられるかという確認も重要になります。

有機抹茶の安定供給には、転換期間と加工体制の準備が必要

有機栽培を目指す場合は、契約する数量だけでなく、いつからどの条件で出荷できるかを買い手と共有する必要があります。栽培方法の変更、認証、加工工程の管理を、一つの計画として整理しましょう。

有機として出荷できる時期を先に確認する

国内で対象となる農産物や加工食品に「有機」「オーガニック」と表示して販売するには、有機JAS制度に沿った認証・格付・表示が必要です。農薬の使用をやめただけで、直ちに有機表示で出荷できるわけではありません。[3]

農林水産省の説明では、茶のような多年生作物は、原則として有機農産物としての最初の収穫前に3年以上の有機的管理が求められます。具体的な扱いは、それまでの圃場の履歴も含め、登録認証機関に確認して計画を立てることが大切です。[4]

転換期間中には、基準を満たして認証・格付を受け、「転換期間中」であることを明示して出荷する仕組みもあります。ただし、その原料を買い手が受け入れるか、どの価格で取引するかは別の問題です。

有機への転換を始める前に、移行期の販売先、管理費用、認証取得後の出荷見込みまで話し合っておくと、栽培計画を組みやすくなります。

茶畑と工場の準備を並行して進める

抹茶の原料となる碾茶は、被覆栽培した茶葉を蒸し、揉まずに乾燥させて製造します。碾茶栽培へ転換する際には、摘採した生葉の受け入れ先と加工体制も必要です。[2]

確認したいのは、摘採の時期に工場が受け入れられる量、有機原料を扱う工程管理、仕上げや粉砕を担当する事業者、保管・出荷の分担などです。有機抹茶として販売する計画では、原料の認証に加えて、加工段階で必要となる認証や管理も確認しなければなりません。

生葉の重量と、乾燥・仕上げ・粉砕を経た製品の重量は異なります。買い手の希望数量から必要な茶園面積を考える際は、納品する段階と加工歩留まりをそろえて計算することが欠かせません。

海外向けについても、有機認証と、輸出先の残留農薬基準・表示・証明書などの条件を併せて確認します。販売先や輸出を担う事業者と、栽培を始める前から情報を共有しておきましょう。[3・5]

栽培の記録を、品質を説明できる情報に育てる

継続的な取引では、出荷した茶の評価を次の栽培へ生かせることも重要です。そのためには、茶園での作業と出荷した原料を結び付ける記録が役立ちます。

最初から複雑な仕組みを導入する必要はありません。たとえば、次の情報を茶園ごとにそろえる方法が考えられます。

  • 茶園の場所や区画、品種、樹齢、面積
  • 施肥、防除、除草などの作業内容と使用資材
  • 被覆の方法、開始日、取り外した日
  • 摘採日、生葉重量、加工先、加工後の数量
  • 出荷単位を識別する番号と、品質検査・買い手評価の結果

こうした記録があれば、「前回と色や風味が違った」という評価を受けたときに、茶期や栽培・加工条件を照らし合わせやすくなります。産地や生産方法をさかのぼって確認する、トレーサビリティの基礎にもなるでしょう。

買い手へ渡す情報の範囲も、事前に決めておくとスムーズです。取引に必要な情報を明確にし、栽培ノウハウや写真などを広告に利用する際の取り決めも共有しておきます。

TEA ENERGYでも、圃場のデータと消費市場の動向を捉え、栽培や販売に生かすことを重視しています。記録と買い手の評価をつなぐことも、将来の茶園づくりを考えるうえで大切な視点です。[6]

営農型太陽光を、栽培と販売を支える茶園づくりに生かす

求められる茶の条件や販売の見通しが具体的になったら、次に考えたいのが、それを生産し続けるための設備と作業環境です。茶園の条件に合えば、営農型太陽光も検討する選択肢になります。

TEA ENERGYは、お茶に特化した営農型太陽光発電事業として、農業機械に合わせた架台設計や、専用架台を碾茶栽培の遮光棚として活用する仕組みを提案しています。有機栽培に適した品種・栽培方法の共有、販売網の活用も、事業の取り組みとして紹介しています。[7]

茶園づくりでは、品種や畝の配置、摘採・防除の動線、被覆作業を一緒に考えることが重要です。改植を伴う場合も、売り先が求める品質や摘採時期を見据えて検討すると、栽培と販売の計画を合わせやすくなります。

ただし、パネルを設置すれば自動的に碾茶に適した条件が整う、あるいは有機認証を取得できるということではありません。作物に届く光、生育・収量・品質、日常の作業性を確認しながら、被覆方法を含めて計画する必要があります。

TEA ENERGYでは、発電事業の収益を活用して栽培棚の設備投資を賄う仕組みも案内しています。導入を検討する際は、栽培棚の利用条件に加え、農業側で必要となる費用や営農の役割分担まで確認しましょう。[8]

栽培、加工、販売、設備を一つの計画として考えることが、茶園を長く続けるための準備になります。

茶園の現状を整理し、次の取引と生産を考える

中長期の取引を検討する第一歩は、自分の茶園でできることと、これから整えることを整理することです。たとえば、次の項目をまとめると、買い手や支援事業者との相談を進めやすくなります。

整理する項目分かる範囲で用意したい情報
茶園所在地、面積、品種、樹齢、傾斜、農道や水の条件
生産茶期別の収量、現在の被覆方法、使用する農業機械
加工・販売生葉の受け入れ先、加工先、現在の販売形態、検討中の用途
有機栽培現在の認証状況、使用資材の履歴、転換を希望する範囲
将来計画改植・更新の時期、担い手、設備導入で改善したいこと

すべてをそろえてからでなければ相談できない、ということではありません。現状と希望を共有することで、確認すべき順序も見えてきます。

抹茶需要の拡大を茶園経営につなげるには、求められる品質を、無理のない数量と費用で、継続して届ける体制を整えることが大切です。茶畑単位の中長期契約という事例は、その体制を買い手と一緒に考えるヒントになります。

TEA ENERGYは、消費市場の変化を捉えながら、継続的な茶業を支える販売と生産のあり方を考えています。碾茶栽培や有機栽培への取り組み、営農型太陽光を活用した茶園づくりに関心のある方へ、事業の仕組みや導入の考え方をご説明しています。[7〜9]

「現在の茶園で碾茶栽培を検討できるか」「改植と設備導入をどう組み合わせるか」「販売を見据えて、何から準備すればよいか」。具体的な計画が固まっていない段階でも、まずは茶園の状況とご希望をお聞かせください。

営農型太陽光・碾茶栽培についてのご相談は、TEA ENERGYのお問い合わせページからお気軽にご連絡ください。

※本記事は2026年9月28日までに確認した公表資料を基にしています。企業事例の説明と、茶農家に向けた一般的な検討事項を区別して記載しています。個別の導入・取引条件は、茶園の状況や事業計画に応じて確認が必要です。

出典・参考資料

  1. 鈴与グループ「Blue Farm株式会社への出資について」(2026年9月11日)
    鈴与商事による出資、MatchaaSの茶畑単位の中長期契約、栽培から加工・品質管理までの仕組み。
  2. 農林水産省「茶をめぐる情勢」(2026年7月)
    本文2頁の茶の種類、17〜20頁の輸出実績・形状別区分・有機茶・輸出対応。PDFのページ番号は本文の番号と異なります。
  3. 農林水産省「有機食品の検査認証制度」
    有機表示、認証・格付、加工食品の規格、有機食品の輸出入に関する情報。
  4. 農林水産省「転換期間中有機農産物とは」
    多年生作物の有機的管理期間、転換期間中の農産物の扱いと表示。
  5. 農林水産省「日本茶輸出促進ポータル」
    輸出先の残留農薬基準、食品の規格基準、有機認証制度などの確認先。
  6. TEA ENERGY「データ分析(圃場・市場)」
  7. TEA ENERGY「営農型太陽光発電」
  8. TEA ENERGY「どうして農家が栽培棚を無償で利用できるのか?」
  9. TEA ENERGY「小売・卸売販売」

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