ブログ

営農型太陽光の制度見直し案とは?「遮光率30%未満」を茶畑から考える

農業を続けながら農地の上部で発電する「営農型太陽光発電」について、農林水産省が制度の見直しを進めているという話題がニュースになっています。

報道では「遮光率30%未満」「年間50万円以上の生産・販売実績」といった数字が注目を集め、議論が交わされていました。しかし、2026年8月25日時点で、これらは施行済みの規制ではありません。農林水産省が公示した省令案・基本方針改正案に盛り込まれ、パブリックコメントを終えた段階です。

営農実態の乏しい事業を排除し、農業を中心に制度を立て直す方向性は重要です。一方、茶は生産する茶種や時期に応じて日射を調整する作物であり、遮光が暑熱や凍霜害を和らげる可能性もあります。全国・全作物に同じ遮光率を適用することには、茶農家として懸念が残ります。

この記事では、農林水産省の検討会資料とe-Govで公示された改正案を基に、検討中の制度、既存設備への影響、茶園で考慮すべき点を整理し、TEA ENERGYの意見をお伝えします。

先に結論

  • 遮光率30%未満は、2026年8月25日時点ではあくまで「改正案」です。
  • 公表された省令案では、主要部分を2027年4月1日に施行する予定としています。
  • 施行前に許可を受けた事業を同じ内容で継続する場合、「当分の間」は従来規定を適用する経過措置案があります。
  • 新規事業には30%未満を原則としつつ、公的機関等の科学的根拠に基づいて市町村が特例を定められる案も示されています。
  • 静岡県内の茶園では、遮光率50%の設備で収量・品質への影響がみられず、凍霜害の発生が抑えられる傾向を示した農林水産省事業の実証例があります。

現在は「決定済みの規制」ではなく改正案

まず重要なのは、確定した制度と検討中の内容を区別することです。

農林水産省は2026年7月24日、営農型太陽光に関係する二つの省令案と基本方針改正案を公示しました。パブリックコメントは8月22日に締め切られていますが、8月25日時点では意見募集結果や最終的な省令・基本方針は公表されていません。

したがって、遮光率などの基準は今後修正される可能性があります。ただし、具体的な条文案まで示された段階であり、単なる構想でもありません。新規計画や再許可を控える事業者は、最終的な公布内容と運用通知を継続して確認する必要があります。

公表された省令案では、農地法に関わる主要部分の施行日は2027年4月1日とされています。施行後の新規申請については、市町村が対象地域を基本計画に位置づけるまでの間、一定の条件下で従来規定による申請を認める経過措置も示されています。その期間は施行日から最長4か月ですが、すべての申請に無条件で認められる猶予期間ではありません。

なぜ制度が見直されるのか

見直しの背景には、下部農地で適切な農業が続けられていない事例があります。

農林水産省の資料によると、営農型太陽光の一時転用許可は2013年度から2023年度までの累計で6,137件です。2023年度末の調査対象5,167設備のうち、下部農地の営農に「支障あり」とされたものは1,221設備、24%でした。

ただし、この1,221設備をすべて「営農する意思のない不適切事業」と捉えるのは正確ではありません。内訳には、栽培管理等が不適当だったことによる単収減少・生育不良872件のほか、災害や営農者の病気等87件、設備工事等の遅延144件、その他118件が含まれます。また、この資料から、支障の原因を遮光率の高さだけに求めることもできません。

一方、制度の信頼性を守るため、営農実態の確認や改善されない事案への対応を強める必要性は理解できます。真剣に農業と発電の両立に取り組む農家・事業者にとっても、農地を発電設備の置き場としてしか見ない事業が放置されることは望ましくありません。

制度見直し案の主な内容

今回の案は遮光率だけでなく、営農者、栽培品目、作業空間、地域との合意、利益還元、監督までを対象としています。

項目改正案の概要
手続の枠組み市町村の基本計画と事業者の設備整備計画の認定を、一時転用許可に結びつける
遮光発電設備の投影面積による遮光率を30%未満とする。遮光率で判断しにくい設備は、作物の生育期間を通じて、ほ場の全地点で日射量の減少率を20%未満とする
高さ・通路最低地上高をおおむね3m以上とし、農業機械の通路幅がおおむね4m以上となるよう支柱を配置する
営農者・品目必要な労働力と農業の持続性を確保し、地域で一般的に栽培され、一般的な販路がある品目を基本とする
地域共生・利益還元地域の協議の場などで合意を得る。発電事業者と営農者が異なる場合は、双方の合意に基づく適正な利益還元を求める
安全・監督損害への備えと撤去費用の確保を求め、現地調査や衛星データ等による確認を強化する

営農者については、栽培品目に関して年間50万円以上の生産・販売実績等を有するなど、「業としての農業の持続性」を確保する考え方が示されています。これは報道で「50万円基準」と呼ばれていますが、公表資料の文面は、対象ほ場だけで毎年50万円を売り上げることを明記したものではありません。何を実績として認め、どの資料で確認するかは、最終規定と運用資料を待つ必要があります。

また、地域計画の区域内では、営農者が地域計画に農業を担う者として位置づけられていることなども条件案に含まれます。今後は設備と作物だけでなく、地域農業の中で事業をどのように位置づけるかが、これまで以上に重視される方向です。

遮光率約50%の既存設備はどうなるのか

既存事業者が最も気になるのは、次回の一時転用許可で30%未満への改修を求められるかどうかです。

公表された省令案には、施行前に農地法第4条または第5条の許可を受けた者が、施行後も同一の事業を継続するために許可を申請する場合、「当分の間」は改正前の規定を適用する経過措置が置かれています。

この案がそのまま施行されたとしても、2027年4月1日を境に既存の設備まで直ちにパネルを減らすことになるわけではありません。同一事業としての再許可にも、30%未満を直ちに一律適用する案とはなっていません。

ただし、「当分の間」の具体的な期間は条文案に示されておらず、事業内容の変更がどこまで「同一の事業」と扱われるかも、個別判断や今後の運用に関わります。既存設備が将来にわたり無条件で保護される、とまではいえません。

既存事業への監督は、むしろ強化される方向です。農林水産省は、国と都道府県が連携して審査・現地調査を行う対象を下部農地4ha超から2ha超へ広げること、生育期間中の現地確認や衛星データ等を活用すること、改善されない事業は再許可しない方針を明確にすることなどを示しています。

既存事業者には、許可書類、営農計画、毎年の栽培実績・収支報告、収量・品質、作業記録を整え、適切な営農を客観的に説明できる状態が求められます。

新規事業で30%以上となる特例はあるのか

改正案は新規設備の遮光率を30%未満とする一方、科学的根拠に基づく特例の余地を残しています。

基本方針改正案では、公的機関、大学またはそれらの研究機関が、複数年の試験栽培結果等から科学的根拠を示し、制度の基本理念を確実に実現できる場合、国・都道府県の助言に基づいて市町村が設備形状や実施形態の特例を定められるとしています。都道府県の機関と試験栽培を行う場合も、同様の扱いが想定されています。

これは、事業者が独自に「茶に遮光は必要」と主張すれば30%以上にできる、という制度ではありません。公的な根拠、市町村の基本計画への位置づけ、地域での協議、個別の設備整備計画の認定などが必要になると考えられます。

茶に関する既存の実証結果は重要な資料になり得ますが、すべての茶園で遮光率50%を自動的に認める根拠にはなりません。地域、品種、茶種、設備形状、畝の向き、栽培方法によって影響が変わるためです。特例を現場で機能させるには、国が必要な試験年数、測定項目、審査方法を明確にすることが欠かせません。

茶園で「30%未満」の一律適用が気になる理由

茶は、光が多いほど常に収量や品質が高まる作物ではありません。生産する茶種や時期に応じて、日射を調整する栽培が行われています。

とくに抹茶の原料となる碾茶では、摘採前に茶園を被覆します。適切に設計されたパネルの影は、発電のために農業側が受け入れるだけの不利益ではなく、遮光棚としての利用や、暑熱・乾燥・凍霜害を和らげる機能を持つ可能性があります。

静岡県内の50%遮光実証で示された結果

農林水産省の「営農型太陽光発電 高収益農業実証事業」では、2018年度と2019年度の2か年間、静岡県島田市の茶園で実証が行われました。施設面積4.6a、発電出力22kW、遮光率50%、支柱間隔3m、高さ2.8mで、品種は「かなやみどり」です。

農林水産省の結果概要には、50%程度の遮光でも収量・品質への影響がないとの結果に加え、一番茶の新芽の生育が早い傾向、朝方の葉温低下が抑制され、凍霜害の発生が抑えられる傾向が記載されています。

これは一つの地域・品種・設備による実証であり、すべての茶園の最適遮光率を決めるものではありません。それでも、「30%を超える遮光は茶の営農に支障を与える」と一律に判断できないことを示す重要な資料です。

暑熱対策の可能性も、条件をそろえて評価する

パネルで日射の一部を遮ると、葉や地表が受け取る熱が減り、高温や乾燥の影響が和らぐ可能性があります。2026年に学術誌『Agriculture』へ掲載された中国の茶園研究では、特定の品種と追尾式設備の条件下で、設備下の光環境や微気象が変化し、2023年と2024年の生葉収量が露地対照区をそれぞれ15.3%、9.3%上回ったと報告されています。春の凍霜害と夏の高温ストレスへの抵抗性も高まったとされています。

ただし、この結果を静岡県の茶園へそのまま当てはめることはできません。地域、品種、設備が異なるためです。また、TEA ENERGYが静岡県西部の幼木園で確認したパネル下の土壌水分や生育の違いも、現地観察であり、パネルの効果だけを分離した比較試験ではありません。

遮光の効果を説明するには、パネル下と対照区で、日射量、葉温、気温、湿度、土壌水分、生育、収量、品質、凍霜害などを継続して測定する必要があります。

遮光率だけでは実際の光環境を表せない

改正案の遮光率は、設備直下の農地面積に対する発電設備の投影面積から算出します。しかし、茶樹が実際に受ける光は、パネルの幅・角度・間隔、架台の高さ、固定式か追尾式か、畝の向き、地形、季節、一日の影の移動によって変わります。

同じ遮光率でも、細いパネルを分散させる場合と、大きなパネルを一部に集中させる場合では、光の当たり方は同じではありません。遮光率は事前審査に使いやすい指標ですが、収量や品質を単独で決める数値ではない点に注意が必要です。

TEA ENERGYの考え

TEA ENERGYは、営農実態が乏しい事業への審査・監督を強化する方向に賛成です。そのうえで、遮光率30%未満を全国・全作物へ一律に適用することの妥当性は、作物別の科学的根拠を踏まえて慎重に検討すべきだと考えます。

農業で重要なのは、作物が適切に育ち、収穫・販売され、営農が継続することです。遮光率が30%未満でも栽培管理が不十分なら生育不良は起こり得ます。反対に30%以上でも、作物特性と地域の気象に合った設計・管理によって収量と品質を確保できる事例があります。

制度の実効性を高めるため、次の三点を求めたいと考えています。

  1. 遮光率だけでなく、収量・品質・販売・作業性・営農継続を総合的に評価すること
  2. 茶など遮光を栽培に活用する作物について、公的実証を基に作物別の基準や特例を整備すること
  3. 暑熱・乾燥・凍霜害への影響を共通の測定方法で蓄積し、科学的根拠を市町村間で利用できる仕組みを設けること

科学的根拠に基づく市町村特例が案に入ったことは評価できます。ただし、自治体や農家ごとに同じ実証を最初から繰り返さなければならない仕組みでは、実際の利用は難しくなります。国・県・研究機関がデータと審査方法を共有し、根拠のある優良事業を適切に判断できる制度が必要です。

TEA ENERGYの設備と今後の対応

TEA ENERGYでは、茶園での作業を起点として架台とパネルを設計しています。

既存設備の遮光率はおおむね50%です。また、乗用型摘採機や乗用型防除機が余裕を持って作業できるよう、架台の高さを4m、幅を6mとし、一つの架台区画に茶畝を3通り配置できる設計を採用しています。

ただし、TEA ENERGYのいう「架台の高さ4m・幅6m」と、改正案の「最低地上高おおむね3m・農業機械の通路幅おおむね4m」は、測定位置や定義が同じとは限りません。数値だけを比べて適合すると断定せず、正式な基準が示された後に、梁、支柱、基礎、筋交い、配線を含む実測値で確認します。

既存の同一事業には従来規定を適用する経過措置案があるため、現時点で直ちに設備改修が必要と判断する状況ではありません。一方、営農実績を厳格に確認する方向は明確です。TEA ENERGYとしても、収量・品質、葉温・土壌水分、凍霜害・高温被害、作業時間・安全性などの記録を継続し、発電量だけでなく茶園への影響を客観的に説明できるよう努めます。

なお、遮光率を50%から30%未満へ下げれば、一般に設置可能なパネル面積や設備容量が小さくなり、事業性や営農者への利益還元に影響する可能性があります。ただし、発電量はパネル効率、方位、角度、配線構成などにも左右されるため、遮光率の減少割合と同じ比率で減るとは限りません。

よくある質問

ここでは、今回の発表を受けて特に誤解されやすい点を簡潔に整理します。

Q. 遮光率30%未満は、もう決まりましたか?

いいえ。2026年8月25日時点では、パブリックコメントを終えた改正案です。公表された省令案では主要部分を2027年4月1日に施行する予定ですが、最終内容は公布後に確認する必要があります。

Q. 既存の遮光率50%設備は改修が必要ですか?

現在の省令案は、施行前に許可を受けた同一事業の継続について、「当分の間」従来規定を適用するとしています。直ちに30%未満へ改修させる案ではありませんが、営農実績の確認は厳しくなる方向です。個別案件は許可権者へ確認してください。

Q. 新規の茶園で30%以上にすることは可能ですか?

原則は30%未満ですが、公的機関等の複数年の試験結果などに基づき、市町村が特例を定められる案があります。自動的に適用される例外ではなく、具体的な手続と判断基準は、最終制度と自治体の基本計画を確認する必要があります。

まとめ 「30%か50%か」だけで農業を判断しない制度を

制度見直しの目的は、農業を中心に営農型太陽光を適正化することです。不適切な事業への監督強化は必要ですが、遮光率だけで、作物の生育や事業の適否を一律に判断することには課題があります。

茶では、遮光率50%の設備で収量・品質への影響がなく、凍霜害の発生が抑えられる傾向を示した静岡県内の実証例があります。近年の猛暑や少雨を考えれば、遮光は発電設備の副作用ではなく、条件によっては農業を支える機能にもなり得ます。

今後の制度には、営農実態の乏しい事業を排除しつつ、作物特性と科学的根拠に基づく取り組みを妨げない設計が求められます。TEA ENERGYは最終的な制度を確認しながら、茶園での収量・品質・微気象・作業性の記録を積み重ね、農業と発電を両立できる仕組みを追求していきます。

茶畑への営農型太陽光の導入や、既存設備への制度見直しの影響について詳しく知りたい方は、営農型太陽光発電のサービスページをご覧いただくか、お問い合わせページよりご相談ください。

※本記事は2026年8月25日時点の公表資料に基づく一般的な解説です。改正案は今後変更される可能性があります。個別案件の許可・更新については、管轄する農業委員会、市町村、都道府県、地方農政局等へご確認ください。

参考資料

制度の説明と茶園に関する記述は、次の一次資料・研究論文と照合しました。

関連記事

コメント

この記事へのトラックバックはありません。

TOP
メールアイコンお問合わせ mail iconContact us