有機転換と営農型太陽光発電による新たなお茶づくりの形が、今、注目を集めています。
「有機茶を作りたいけど、農薬や移行期間のルールが難しそう…」
「煎茶から碾茶に切り替えると、どんなメリットがあるんだろう?」
「営農型太陽光って、実際どんな仕組み?農家に何の得があるの?」
こういった疑問やお悩みをお持ちの生産者様も多いのではないでしょうか。
本記事では、有機転換の基本や農薬の扱い方、移行期間中のルールを解説しながら、 碾茶市場の動向や営農型太陽光発電を活用した省力化・脱炭素の事例についてもご紹介します。
これからの時代に選ばれるお茶農業のヒントをお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
有機転換における移行期間と農薬の基本ルール
有機転換における「移行期間」と「農薬使用」の基準は、認証取得を目指すうえで最初に把握しておくべき重要な要素となります。
①有機転換とは何か
有機転換とは、慣行栽培から有機栽培へと農法を切り替えるプロセスのことです。
お茶は多年生作物であるため、他作物よりも転換に時間がかかります。
農林水産省の有機JAS制度では「有機的管理を始めてから3年以上経過した圃場で収穫されたもの」が認証対象とされています。
この期間を「転換期間」と呼び、転換期間中は有機農産物として正式に販売することはできませんが、「転換期間中有機農産物」として扱うことが可能です。
有機転換は、一時的に手間が増え収益も減少する可能性がありますが、中長期的にはブランド価値の向上につながる選択肢です。
②移行期間の定義と年数
有機転換の移行期間とは、具体的には「化学合成農薬・化学肥料を使わずに管理された期間」のことを指します。
お茶のような多年生作物の場合は、最初に収穫を行う3年前から有機的管理を行う必要があります。
つまり、たとえば2028年に有機認証を得たい場合、2025年の時点で管理の切り替えが必要ということです。
下記の表に、農作物ごとの移行期間の目安をまとめました。
作物の種類 | 移行期間 | 備考 |
---|---|---|
年次作物(野菜など) | 2年以上 | 播種・定植前からの管理が必要 |
多年生作物(茶など) | 3年以上 | 最初の収穫前からカウント |
この移行期間中も、登録認証機関に申請し認められれば「転換期間中有機農産物」として販売可能になります。
③農薬使用は本当に禁止?
結論から言えば、農薬は「一部を除いて原則使用不可」です。
化学合成農薬はもちろん、有機JASで指定されていない資材も使用できません。
ただし、例外的に認可されている天然由来の防除資材(例えば、木酢液や一部の天然ミネラル)は条件付きで使用が認められています。
農薬使用の有無によって今後の認証審査に大きく影響するため、慎重な確認が必要です。
「これは大丈夫?」と迷った場合は、必ず登録認証機関や地域農政局に問い合わせましょう。
④転換期間中にできること
転換期間中には、有機的管理を継続しながら「転換期間中有機農産物」として表示・販売が可能です。
ただし、この表示にはあらかじめ登録認証機関からの認定が必要となるため注意しましょう。
表示には「有機農産物」ではなく、「転換期間中有機農産物」と明記する必要があります。
また、販売時の表示ルールは厳格で、消費者に誤解を与えないよう詳細なガイドラインに従わなければなりません。
この期間をどう乗り切るかが、有機転換成功のカギとも言えます。
有機碾茶が注目される3つの理由
有機転換の中でも、特に「碾茶(てんちゃ)」が注目されている背景には、国内外の市場動向と消費者ニーズの変化があります。
①海外需要と残留農薬規制
海外、特に欧州連合(EU)では、食品に対する残留農薬規制が年々厳しくなっています。
その影響もあってJAS有機認証を受けた日本の茶葉への需要が急増しており、碾茶もその例外ではありません。
2023年には有機碾茶の輸出量が前年比で約28%増加し、輸出先の多くがEUおよび北米市場です。
有機転換済みの茶農家は、これらの市場に対して安定した販売チャネルを持つ可能性が高くなります。
このような国際規格への対応は、日本茶の将来を考えるうえで避けて通れません。
②抹茶ブームと碾茶価格の高騰
近年、世界的な抹茶ブームにより、その原料となる「碾茶」の市場価格が上昇しています。
特に有機JAS認証付きの碾茶は高付加価値商品として扱われ、2025年には1kgあたりの卸価格が前年比で2倍以上に跳ね上がった事例もあります。
下記は農林水産省の公表データをもとにした平均価格の推移です。
年度 | 通常の碾茶(kg単価) | 有機碾茶(kg単価) |
---|---|---|
2021年 | 3,200円 | 4,500円 |
2022年 | 3,300円 | 5,100円 |
2023年 | 3,250円 | 6,000円 |
2024年 | 3,200円 | 7,500円 |
なお、2025年は1kgあたり10,000円を超える有機碾茶も多かったようです。
単価の上昇は農家にとって大きな収益チャンスであり、有機転換の意義を経済的にも裏付けています。
③JAS認証のブランド価値
有機JAS認証は、日本国内外での信頼を高める大きな要素です。
輸出を考えている茶農家の方は、JAS認証があるかどうかで商談の有無すら左右されることを知っておくべきでしょう。
また、消費者も「有機」「オーガニック」「無農薬」という表記には敏感であり、選ばれる大きな理由になります。
2024年の消費者調査では、「オーガニック認証がある商品を優先して選ぶ」と回答した人が、茶葉購入層の63%を占めました。
こうした認証の有無は「売れるかどうか」に直結する、無視できない要素なのです。
煎茶から碾茶へ転換するメリットと注意点
煎茶から碾茶へ転換するのであれば、有機転換と並行して考えことで、より高付加価値な茶の生産につながります。
①碾茶に適した品種と栽培方法
碾茶の生産には、被覆栽培に適応した品種の選定が重要です。
たとえば「さみどり」や「ごこう」は碾茶用として高く評価されており、抹茶にした際の色味や香りが秀逸です。
近年では「つゆひかり」「おくみどり」など煎茶用品種とされていた品種であっても碾茶としての評価が高まってきました。
被覆期間中は日光を遮ることで収量は減少するため、樹勢の強い品種を選ぶことをおすすめします。
また、遮光資材の設置が欠かせないため、専用の設備もしくは被覆を担当する人員の確保は必須です。
太陽光パネルの架台を活用した被覆棚の導入ができれば、省力化と安定した遮光管理が可能になります。
②収穫・加工のスケジュールの違い
碾茶と煎茶では、収穫や加工の流れが大きく異なります。
特に碾茶は、摘採前20日程度の遮光管理が品質や収量を大きく左右するため、被覆タイミングが極めて重要です。
収穫後の加工も、蒸した葉を揉まずに乾燥させる「碾茶炉」を用いる特殊な工程を要します。
このため、加工設備の導入や委託体制の整備もあわせて計画する必要があります。
一連の工程が異なることを理解し、設備・人員・時間配分に余裕を持たせることが成功のカギです。
③転換のコストとリスク
煎茶から碾茶への転換には、品種変更・栽培方法の変更・遮光設備の導入・加工施設の調整など、さまざまなコストが発生します。
一般的に、遮光棚の導入費用は10aあたり数十万円から数百万円、加工施設の整備には億単位の投資が必要とされています。
また、慣れない栽培管理による収量低下や品質不安も考慮すべきリスクです。
そのため、補助金制度や企業との連携、長期的な販売計画とセットで考えることが大切です。
ただし、成功すれば市場単価は煎茶の約2〜3倍となるため、中長期的には高収益が期待できます。
営農型太陽光で実現する碾茶用被覆棚の新しいカタチ
TEA ENRGYが提供する営農型太陽光発電は、再生可能エネルギーの活用と、碾茶生産における省力化・収益性向上を同時に実現する仕組みです。
①被覆棚として活用できる専用架台
TEA ENERGYの営農型太陽光発電は、農地上に設置される架台を碾茶用の被覆棚として兼用できる点が特徴です。
この架台は通常の農地利用を妨げない高さと構造設計となっており、遮光資材を装着できる専用設計になっています。
従来の支柱式の被覆棚と比較しても頑丈で耐風性にも優れており、長期的な設備投資としても安心です。
また、収穫時の機械作業や農機の進入にも配慮した設計になっているため、現場の作業効率も確保されています。
碾茶栽培の必須条件である「日射制御」をインフラと組み合わせることで、省スペース・高機能な農業が実現できます。
②レール式被覆で省力化を実現
架台にはカーテンレール式で被覆資材を設置可能で、被覆・開閉作業を効率的に行える仕組みです。
従来の茶園への直掛けによる被覆作業と比べて、作業者と作業時間を大幅に削減できます。
被覆資材はレール式で二重に被せることができるため、碾茶に必要な85〜95%の遮光条件を安定して確保することが可能です。
TEA ENERGYの営農型太陽光発電システムは、そうした被覆作業の手間を軽減する省力的な仕組みとして設計されています。
③売電主体と農地活用の仕組み
TEA ENERGYのモデルでは、太陽光発電による売電事業は金融機関や提携企業が主体となって行います。
そのため、太陽光発電に関する運用・管理の負担は一切なく、農作業に集中できるのが特徴です。
再生可能エネルギーの活用によって環境貢献しながらも、農業現場では省力化と品質向上が両立される仕組みです。
TEA ENERGYは、こうした「営農×環境インフラ」の融合を支援するパートナーとして活動しています。
有機転換に関するよくある質問とその答え
こちらでは、有機転換を検討する中で農家の皆さんからよく寄せられる疑問にお答えします。
不安や誤解を解消することで、一歩踏み出しやすくなるはずです。
①農薬ゼロじゃないとダメなの?
有機栽培では、すべての農薬が禁止されているわけではありません。
使用できるのは、有機JAS制度により指定された「特定の天然由来資材」に限られます。
例えば、木酢液や一部の微生物資材などは条件付きで使用可能です。
ただし、これらを使う際にも「記録を残す」「認証機関に確認する」という手順を守ることが重要になります。
つまり、農薬ゼロではなく、「ルールに則った使用」が求められるのです。
②転換期間中の出荷は可能?
可能です。ただし「有機農産物」としての出荷ではなく、「転換期間中有機農産物」としての出荷になります。
この表示には、登録認証機関による認定と、パッケージへの明記が必要です。
なお、この区分であっても有機志向の高いバイヤーや顧客には一定の需要があります。
むしろ「移行中」という姿勢が、誠実さや将来の有機認証への期待として受け取られるケースもあるようです。
ただし、あくまで正確な管理と表示が前提です。
③TEA ENERGYでの支援は?
TEA ENERGYでは、営農型太陽光設備の導入だけでなく、有機転換や碾茶化を目指す農家向けの支援も実施しています。
例えば、遮光棚としての架台提供、レール式被覆設備の導入アドバイス、碾茶・抹茶市場への販売チャネルの相談などにも対応可能です。
また、行政や補助金制度との連携を含めた導入計画の立案支援も対応しています。
「環境価値と経済価値の両立」を目指すTEA ENERGYの取り組みは、単なる設備提供にとどまりません。
ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
今回は、有機転換や移行期間の基本から、碾茶市場の可能性、そしてTEA ENERGYが提案する営農型太陽光との組み合わせまでを詳しくご紹介しました。
有機栽培のハードルは低くはありませんが、正しい知識と仕組みを活用すればチャンスの大きい分野でもあります。
特に碾茶の需要増加と価格上昇は、農家の収益向上を後押ししてくれるはずです。
さらに、営農型太陽光発電を使った被覆棚の省力化モデルは、未来型の農業の可能性を広げてくれるでしょう。
「環境への配慮」「高い経済性」──その両方を実現するために、ぜひ今回の内容を参考に新しい一歩を踏み出してみてください。
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