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営農型太陽光とは何か。地域に受け入れられる“農業を支える再エネ”の条件

近年、太陽光発電をめぐっては、地域合意が不十分な開発型案件を中心に、慎重な目線が強まっています。

その中で注目されているのが、農地を守りながら営農を続けることを前提にした「営農型太陽光(ソーラーシェアリング)」です。

本記事では、制度の要点を踏まえつつ、地域に受け入れられるために必要な条件を実務目線で整理しています。

TEA ENERGYでは、営農型太陽光を「発電設備の設置」ではなく、農業を支える基盤づくりとして捉えています。


営農型太陽光の定義と制度の要点

こちらではまず「営農型太陽光とは何か」を制度面から押さえます。

営農型太陽光の基本についてはこちらをご覧ください。

営農型太陽光は「営農継続」が前提の仕組み

営農型太陽光とは、農地の上部空間に太陽光パネル等を設置しつつ、下部で営農を継続する取り組みです。

営農型太陽光においてもっとも重要なのは、農地で営農を続けることが前提条件として組み込まれていることです。一般的な太陽光発電のように「パネルを置いて発電すること」が本体なのではありません。

一時転用と、場合によっては農地法3条許可

既存の農地に太陽光システムを設置するためには、まず農地に支柱を立てる必要があります。その際に忘れてはいけないのが、支柱部分について農地転用許可(いわゆる一時転用)が必要になることです。

また、太陽光発電設備の設置者と営農者が異なり、上部空間に関して地上権等を設定する場合には、農地法第3条第1項の許可が必要になります。

近年の制度整理の方向性

営農型太陽光については、従来許可基準等を通知で運用してきた経緯があります。

一方で、営農が適切に継続されない案件への懸念などが背景となって、許可基準等を農地法施行規則に位置づけ、ガイドラインとあわせて令和6年4月1日に施行する形で整理が進められています。

つまり現在は、「営農を中心にした両立」を明確にする方向で制度運用が強化されている状況です。

  • 営農型太陽光は、営農継続が制度上の前提
  • 支柱は一時転用が必要で、地上権等を設定する場合は農地法3条許可も関係
  • 令和6年4月施行の制度整理で、営農を伴わない案件を抑止する方向が明確

「地域が主導しないソーラー」と営農型太陽光の違い

ここでは、議論が混線しやすい「太陽光への反発」と「営農型太陽光」を分けて整理したいと思います。

この問題のポイントとなるのは、設備の種類ではなく土地利用と意思決定のプロセスです。

反発が起きやすいのは「進め方」と「影響の見えにくさ」

太陽光設備に対する地域の警戒感が高まりやすいのは、合意形成が不十分なまま進む案件です。

とくに造成や伐採を伴う場合、地域の景観や災害リスクなどが一度に問題化しやすいこともあり、「誰が何のために進めるのか」が見えないほど反発が強くなる傾向があります。

営農型太陽光は「農地を農地のまま維持する」ことが中核

営農型太陽光において前提となっているのは、土地利用を置き換えるのではなく、農地を農地として維持したまま営農を継続することです。

営農型太陽光の事業を進めるためには、まずこの性格の違いを地域に知っていただき、判断できる形にしなければなりません。そのために、発電の説明より先に営農計画・管理体制・地域対応を示すことが重要になります。

  • 論点は「太陽光か否か」ではなく、合意形成と影響の見える化
  • 営農型太陽光は、農地維持と営農継続が中心要件
  • 営農計画と地域対応を先に示すほど、議論が具体化しやすい

不適切事例はなぜ起きるのか

ここでは、営農型太陽光に対する不安がどこから生まれるのかを、数字と構造の面から解説していきます。

弊社では、地域の皆様の不安を「感覚」で扱うのではなく、共感したうえで起きやすい失敗パターンを先に潰すことが重要だと考えています。

「支障があった」事例は一定数ある

農林水産省の集計(令和5年度末)では、営農型太陽光発電設備は5,167件が存続しています。

そのうち、下部農地で「営農に支障があった」とされたものは24%(1,221件)とされています。

数字だけを見ると多いように感じられますが、決して営農型太陽光が否定されるべきというデータではありません。

むしろ、営農中心の設計・運用・改善ができているかどうかが成否を分けることを示しています。

失敗要因は3つに集約できる

実際の失敗要因をリサーチすると、失敗要因は3つに集約できることがわかります。

失敗要因1.光環境の見立てが甘く、遮光が目的化してしまうこと。

失敗要因2.営農KPIとモニタリングがなく、変化が起きても改善できないこと。

失敗要因3.維持管理と責任主体が曖昧で、地域が「最後まで面倒を見る人」を確認できないこと。

TEA ENERGYが重視する「営農中心」チェックリスト

以下は、導入初期で必ず確認したい論点を、設計・運用・地域に分けて整理したものです。

区分チェック項目目的
設計作目・栽培(煎茶/碾茶、有機/慣行)に合わせた光環境の仮説がある影を“勘”で扱わない
設計影の動き(季節・時間帯)を踏まえ作業導線が設計できる現場負荷を先に潰す
運用導入前ベースライン(収量・品質・ムラ等)が取得できる前後比較を可能にする
運用定点モニタリング→改善のプロセスがある失敗を固定化しない
地域反射・景観・災害・撤去などの懸念を初回資料で先出しする不信を生まない
地域窓口・対応フロー・保守体制が一枚で見える放置不安を消す
  • 公的集計でも支障事例は一定数あるため、営農中心の設計が不可欠
  • 失敗要因は「光の設計」「KPI不在」「責任不明確」に集約される
  • チェックリストで“起きやすい失敗”を事前に排除するのが有効

地域合意を得るための進め方

こちらでは、「説明会を開けば伝わる」という発想からさらに一歩進めて、弊社による実務としての合意形成について整理します。

先に結論を述べてしまうと、合意形成の成否は説明会の当日ではなく、事前資料の設計で大きく決まると考えています。

質問の論点は共通のものが多い

地域説明で必ず出る質問は、どの地域であっても共通のものが多くなります。

例としては、反射、景観、災害(台風・強風)、維持管理、撤去、営農影響などです。弊社では、これらの質問事項に関しては曖昧にすることなく、初回資料に入れるなどして説明しておくことが重要だと考えています。

こうした問題についての言及を避けることで、「隠していたのでは」という疑念を生んでしまう可能性もあるからです。そのため、弊社では考えうるリスクも踏まえて隠すことなくお伝えしています。

図表で“見える化”すると議論が落ち着く

太陽光設備設置後の景観に関して、言葉だけで伝えてしまうと個人の好みの対立になりがちです。しかし、資料内で見通し図や主要視点場の整理があると議論は具体になります。

災害対応に関しても同様で、詳しい性能説明を充実させるよりも、点検頻度・初動・連絡体制の明文化が安心につながります。弊社では、資料での見える化をしたうえで地域の皆様にご理解いただいています。

責任主体は「一枚で示す」

弊社のこれまでの経験上、地域の皆様が本当に恐れているのは、事故そのものよりも施工後に放置されてしまう可能性に集約されるように思えます。

だからこそ、弊社では責任主体と対応フローは一枚で見える形にしてお伝えしています。

項目記載する内容(例)
事業責任主体TEA ENERGY(担当部署)
連絡先電話・メール・受付時間
緊急時連絡可否と初動範囲
定期点検月次・季節・年次の頻度
撤去方針と確認方法
  • 合意形成は、説明会当日より事前資料の出来で決まりやすい
  • 反射・景観・災害・撤去・営農影響は“最初から出す”のが信頼につながる
  • 責任主体と対応フローを一枚で示すと、放置不安が下がる

TEA ENERGYの取り組み

こちらでは、弊社がどのような姿勢で営農型太陽光に向き合っているかをご説明します。

営農型太陽光は、制度・設計・地域合意が絡む大きな事業です。弊社では、地域の納得のうえで事業を進められるように以下の取り組みを重視しています。

農業を起点に、地域の納得までを一続きで設計する

弊社では、営農型太陽光に関することは設備の話から入るのではなく、農業側の目的から設計を組み立てます。

そのうえで、地域の懸念(反射・景観・災害・撤去・維持管理)を先回りして資料化し、判断材料として積み上げます。

農業関係者と同じ場で議論する機会をつくる

弊社では、研修会等を通じて営農型太陽光に関する情報提供を行っています。

こうした場での共有は、導入を促すためではなく、誤解が生まれるポイントを減らし、地域と営農者が判断できる状態をつくるためのものです。

太陽光設備を碾茶用の棚として活用できる状態にする

弊社の営農型太陽光の大きな特徴と言えるのは、設備を碾茶用の棚として活用できることです。

高品質な碾茶を作るためには棚設備が欠かせませんが、設置には莫大なコストがかかります。

弊社のモデルでは、太陽光設備を棚として活用できる状態にできるため、生産者様は無償で棚設備を設置できるという大きなメリットが得られます。

  • TEA ENERGYは、発電ありきではなく“営農の継続”を起点に設計する
  • 研修会等で情報提供し、判断材料を増やすことを重視する
  • 太陽光設備を碾茶用の棚としても活用できる状態にする

よくある質問(Q&A)

この章では、導入検討の初期に必ず出る質問の例をご紹介します。

弊社では、答えを断定するのではなく判断できる材料と手順を提示することが重要だと考えています。

Q. 反射が心配です

A. 反射は「起こり得る地点」を特定し、角度と配置で避ける設計を基本とします。

A. 主要視点場(道路・住宅・交差点等)を先に定義し、確認手順まで資料化します。

Q. 景観への影響はありますか

A. 景観は言葉だけで伝えるのではなく、見通し図と主要視点場の整理で具体化します。

A. 影響が出る地点を先に示し、必要に応じて配置や植栽等の調整案も併記します。

Q. 台風や強風時が不安です

A. 性能説明よりも、点検頻度と緊急時の初動フローが安心につながります。

A. 連絡窓口、一次対応範囲、復旧手順までを明文化します。

Q. 作物への影響が心配です

A. 作目や圃場条件で変わるため、営農KPIで検証し、モニタリングと改善を前提に計画します。

A. 公的集計でも「支障あり」が一定数あるため、検証できる設計が不可欠です。

  • Q&Aは断定ではなく、手順と可視化で判断可能性を上げる
  • 作物影響は営農KPIで検証し、改善前提で運用する
  • 地域の不安は“放置されない体制”の可視化で下げられる

まとめ:地域に受け入れられる営農型太陽光の条件

営農型太陽光は、発電をすることがメインとなる一般的な太陽光発電とは異なり、農業を続けることが中心となります。そのため、地域から見ても「農業の延長線」に見えるほど理解していただきやすくなります。

そのために必要なのは、営農KPIで検証できる設計と、維持管理・責任主体・撤去まで含めた可視化です。

当社では、合意形成についても単なる説明のためのイベントではなくプロセスとして設計し、判断材料を積み上げることで地域の皆様に安心していただけるよう努めております。

  • 営農型太陽光は「営農中心」で設計・運用するほど強い
  • 地域の納得は、可視化された責任と保守体制から生まれる
  • 合意形成は段階設計し、判断材料を増やしていく

参考資料

  • 農林水産省「営農型太陽光発電について」
  • 農林水産省「再生可能エネルギー発電設備を設置するための農地転用許可(営農型発電設備)」
  • 農林水産省「営農型太陽光発電設備設置状況等について(令和5年度末現在)」
  • 農林水産省「営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドライン(令和6年4月1日施行)」

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