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世界が求める抹茶とは?煎茶から碾茶へ転換する茶農家に今伝えたい未来の農業戦略

世界で高まる抹茶人気と、それに応えるべく活性化する日本の碾茶栽培。

煎茶から碾茶へ切り替えるべきか、今まさに悩んでいる生産者様も多いことと思います。

本記事では、抹茶の海外需要がなぜ伸びているのか、煎茶との価格差や供給の現状、さらに営農型太陽光発電を活用した持続可能な碾茶栽培のモデルについて、具体的な数値と事例を交えてわかりやすく解説します。

これからの茶業に新たな選択肢を求めるあなたにとって、未来の方向性を見つけるヒントになるはずです。

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抹茶の海外需要が拡大している理由7つ

今、抹茶の世界的な需要は急速に拡大しています。

その背景には健康志向の高まり、食文化の多様化、SNSによる拡散など、複数の社会的要因があります。

ここでは、抹茶がなぜ世界市場で選ばれているのか、主な理由を7つに分けて解説します。

① 健康志向とスーパーフード人気

近年、世界中で健康志向が高まり、抹茶は代表的な「スーパーフード」として注目を集めています。

ご存じのとおり、抹茶には抗酸化作用のあるカテキンやリラックス効果が期待されるテアニンが豊富に含まれているため、美容やダイエット分野での需要も高まっている状況です。

米国のオーガニック市場でも、抹茶は「自然派エナジードリンク」として高く評価されるようになりました。

海外では、医療費削減やセルフケア需要の高まりが、こうした天然素材食品の人気を後押ししていると考えられます。

抹茶の「飲む美容・健康素材」としての価値は今後も継続的に伸びると予測されます。

② アメリカ市場での抹茶ラテの定番化

アメリカでは、スターバックスや現地のオーガニックカフェにおいて、抹茶ラテが定番メニューとして定着しています。

定番メニューとしての浸透は、単なる“和のブーム”にとどまらず、抹茶が日常生活に組み込まれた証拠でもあります。

調査会社であるStatistaによると、2024年における米国の抹茶関連製品の市場規模は約2.4億ドルとされ、その成長率は前年比15%以上です。

データを見ると、特にZ世代を中心とした層がコーヒーの代替品として抹茶を選ぶ動きが顕著です。

この事実から、今後の継続的な需要を見込める確かな基盤が形成できたと言えるでしょう。

③ ヨーロッパのオーガニックブームとの親和性

ドイツやフランスなどヨーロッパの一部地域では、「健康」だけでなく「環境意識」も購買動機となる傾向があります。

抹茶は栽培方法や製造方法によっては環境に配慮することが可能でオーガニック認証との相性も良いため、欧州の高感度市場との親和性が高いとされています。

2023年時点で、EU内の有機抹茶の輸入量のうち約38%が日本からの輸出品だったとのこと(日本茶輸出促進協議会)。

これは日本の茶農家にとって「品質で選ばれる」という数少ない強みを示す結果といえるでしょう。

環境規制が厳しい欧州市場で継続的に売れているという事実は、国際競争力の高さを証明しています。

④ アジア諸国での日本文化人気

台湾・中国・タイなどでは「抹茶=日本文化」の象徴として以前から認知されており、ブランド的価値が非常に高いのが特徴です。

茶道やアニメ、観光体験を通じて「抹茶に親しむ層」がすでに形成されています。

また、「お土産用」「贈答用」としても支持されており、リピート購入が発生しやすい土壌があります。

アジア圏の旺盛なEC需要と日本製品の信頼度の高さも、抹茶の輸出を後押しする重要な背景です。

こうした文化的土壌の上に立つ抹茶は、単なる食品ではなく、“意味”を持った商品として流通しています。

⑤ インフルエンサーによる拡散

SNSを通じて抹茶のレシピ・ルーティンが広まり、特に北米やヨーロッパの若年層に強い影響を与えています。

Instagramでは「#matcha」の投稿が2025年4月時点で2,230万件を超えており、継続的に増加中です。

「抹茶モーニング」「抹茶チャレンジ」などのライフスタイル提案も幅広い層にウケており、消費に直結する流れができています。

注目すべきは、しっかりと生活習慣に浸透している点でしょう。

これは供給側から見ても、一過性のブームで終わるものではなく再購入率の高い商品構造であることを意味しています。

⑥ コロナ禍以降の免疫意識の高まり

新型コロナウイルス流行以降、消費者の関心は「健康」「免疫を整える食品」に移行しました。

抹茶に含まれるカテキンやポリフェノール類には、抗菌・抗ウイルス作用が報告されています(農研機構・論文2022)。

アメリカや中国の健康志向層を中心に、緑茶や抹茶のサプリメント型商品も流通しているのが現状です。

実際、抹茶パウダーの米国輸入量は2020年から2024年の4年間で約1.6倍に拡大しています(JETRO調査)。

今後も「飲む予防習慣」として抹茶が定着する可能性は高いと言えるでしょう。

⑦ 海外の抹茶スイーツ市場の成長

キットカット抹茶味や抹茶アイスクリームなど、抹茶を活用したスイーツは世界中で売れています。

特に「抹茶×乳製品」、「抹茶×焼き菓子」などの組み合わせが人気で、アメリカや韓国ではローカライズ商品も登場している状況です。

また、百貨店や高級スーパーなどでのギフト用途も広がっており、「プレミアム感」が購買動機となっています。

この抹茶に関するトレンドは季節や地域に依存せず、年間を通じて安定した販売が見込める点が特徴で、輸出対象としても優秀です。

菓子メーカーとのタイアップやOEM製造の場面でも、抹茶の原料需要は右肩上がりとなっています。

煎茶と抹茶の輸出量と価格を徹底比較

煎茶は日本の伝統的なお茶として長年親しまれてきましたが、近年は価格の下落と経費の高騰により、経営が厳しい状況に直面しています。

一方で、抹茶の原料である碾茶は海外需要が急増しており、単価の面でも高い優位性を持っているのが現状です。

ここでは、具体的なデータをもとに両者の違いを明らかにし、転換のヒントを探ります。

① 煎茶の価格低下と経費高騰

国内の煎茶市場は高齢化と嗜好の多様化により需要が減少しており、それに伴って市場価格も下落傾向にあります。

JA全農の統計によれば、2023年の煎茶平均取引価格(1kg)は約1,000円〜1,500円程度にとどまりました。

加えて、肥料・燃料・人件費といった生産コストの上昇が経営を圧迫していることは、皆様も実感していることと思います。

とくに肥料価格は2020年比で1.6倍に達しており、利益率の低下は深刻な問題です。

こうした状況のなか、茶業継続のための構造転換が求められています。

② 抹茶の単価と需要の伸び率

抹茶の原料である碾茶は、高価格で安定した取引が期待できる製品です。

2024年の市場取引では、1kgあたり4,000円〜6,000円の価格帯が主流であり、有機栽培など高品質な碾茶においては1万円を超える例も珍しくはありません。

この価格は煎茶の約3〜6倍に相当し、たとえ同じ品種の茶葉を使ったとしても収益性に大きな差が出ます。

さらに、海外での需要は年々増加しており、2025年時点の推定では年成長率(CAGR)10%以上の伸びを記録しています(日本茶輸出促進協議会)。

栽培する作物を変えることなく価格と需要の安定化が図れることは、農家にとって将来性のある選択肢といえるでしょう。

③ 輸出国別の抹茶需要データ

国・地域抹茶輸出額(億円)主な用途
アメリカ約50ラテ・スイーツ・プロテイン飲料
ドイツ約12有機食品・ベーカリー・茶葉
台湾約9ギフト・日常用・菓子加工
中国約8贈答・高級ライン・茶芸
その他欧州諸国約17スーパーフード・OEM供給

抹茶は単なる飲料原料ではなく、健康食品やスイーツ、機能性加工品として幅広い用途を持っています。

とくに米国は全体の約半分を占める最大市場であり、品質とブランドへの信頼が価格に反映されています。

④ 国内の供給が追いつかない現状

現在の国内碾茶生産量は世界市場の需要には到底及ばず、すべての煎茶農家が碾茶に転換しても、なお供給が不足する水準だと言われています。

こうした需給ギャップは、価格の上昇余地や契約栽培の拡大を意味し、農家にとっては大きなチャンスといえるでしょう。

さらに、輸出契約は中長期的な取引となることが多いため、収益の安定化につながることは間違いありません。

農林水産省では2030年までに抹茶輸出量を1.5万トンに倍増させる数値目標を掲げており、まだまだ「抹茶バブル」は続くことが予想されます。

いまこのタイミングで動き出すことが、将来の安定経営につながる鍵となるのです。

なぜ今「碾茶」栽培に切り替える農家が増えているのか?

煎茶から碾茶への転換は、単なる一時的な流行に乗る行為ではありません。構造的な需要の変化に基づく現実的な対応策です。

ここでは農家が碾茶栽培へ切り替える4つの主な理由を解説します。

① 煎茶よりも利益率が高い

碾茶は高単価な上に需要が安定しており、結果として農家の収益率は大幅に上昇します。

煎茶の1kgあたり平均単価が1,200円前後であるのに対し、碾茶は4,000円〜6,000円と約3倍以上の価格帯になることが一般的です(JA全農2024)。

今年(2025年)は、この価格がさらに倍に跳ね上がったという情報もあります。

しかも、抹茶製品として輸出された際にはさらに高付加価値がつきます。

こうした価格構造が、煎茶では難しかった「収益性の確保」を可能にしているのです。

碾茶に転換した農家の中には、販路が確保されたことで年収が2倍近くになった例も報告されています。

② 輸出用茶としての需要の高さ

碾茶は抹茶に加工される前提で生産される、輸出志向の高い農産物です。

日本茶の輸出全体(364億円/2024年)において、抹茶をはじめとした粉末状のお茶の割合は70%以上を占めており、その中核が碾茶です(日本茶輸出促進協議会)。

とくに米国・ドイツ・中国・台湾などでは、「抹茶=日本産」であることに高い価値が置かれています。

品質が安定していれば、海外バイヤーとの契約栽培にもつながり、販路の安定化が見込めるでしょう。

つまり、碾茶は単なる作物ではなく「輸出を前提とした商品」と言えるのです。

③ 長期保存や加工にも向いている

碾茶は荒茶状態で一次加工された後に保冷・保管が可能なため、出荷タイミングの調整がしやすい特徴があります。

煎茶のように“旬”を逃せば価値が落ちるということが少なく、計画的な販売戦略が立てやすくなります。

さらに粉末化・抽出などの加工適性が高く、飲料・製菓・機能性食品など多様な業種に応用が利くことも大きな強みです。

こうした特性により、農協依存型から「直販・OEM供給」型の経営へ移行しやすくなるという利点もあります。

生産後の自由度の高さが、農業経営における選択肢まで広げてくれることは間違いありません。

④ 地域活性化やブランド化のチャンス

碾茶栽培は地域の特性を活かしながらブランド構築がしやすい分野です。

たとえば「宇治抹茶(京都)」や「西尾抹茶(愛知)」のように、地域名と結びついた高価格帯商品がすでに成功事例として存在しています。

近年では静岡・鹿児島・宮崎でもブランド化を目指した取り組みが加速しており、国や自治体の補助事業の対象にもなっています。

さらに、抹茶観光体験やふるさと納税返礼品への展開など、地域経済全体を活性化する力も秘めています。

碾茶の導入は「儲かる作物」であるだけでなく、「地域の誇り」となる可能性まで秘めていると言えるのです。

碾茶栽培に活用される太陽光発電設備の新しい形

TEA ENERGY株式会社は、近年注目されている営農型太陽光発電の活用方法において他社にないユニークなアプローチを採用しています。

それは、太陽光発電設備を「碾茶用の被覆棚」として活用しながら、生産者様に無償で提供するというモデルです。

ここでは、その仕組みとメリットについて詳しく解説します。

① 太陽光設備が“被覆棚”として機能

碾茶は、直射日光を遮って育てる「覆下栽培」が必須です。

TEA ENERGYが設置する太陽光発電パネルは架台を碾茶栽培用の被覆棚として活用でき、寒冷紗を直掛けすることなく手軽に被覆が可能となります。

カーテンレール式で簡単に被覆ができるため、作業者が2名いれば10aあたりの被覆作業が15分程度で完了します。

このため、従来の碾茶栽培と比較して生産者の作業負担が大幅に減るほか、碾茶の品質自体も向上するのです。

品質と効率の両立が図られた、まさに次世代の栽培インフラといえるでしょう。

② 設備は企業保有で、農家は無償利用

この営農型太陽光設備は、TEA ENERGYが企業として保有・運営するもので、生産者が初期費用を負担する必要はありません。

農地提供や耕作を行うことで、農家は被覆棚としての設備を「無償」で利用できます。

生産者が売電収入を得られるわけではありませんが、設備導入のハードルは大きく下がるのが特徴です。

農地を維持しながらインフラ整備が進むモデルとして、多方面から注目されています。

③ 気候変動対策としての効果

国内の茶産地では近年、気候変動による高温障害や日照過多による葉焼けが課題となっています。

太陽光パネルは直射日光を遮り、地温の上昇を防ぐことで高温障害や日照りの課題に対処する効果があります。

また、大雨・強風時にも一定の緩衝構造となるほか、防霜ファン無しでも凍霜害を防ぐ効果も魅力です。

栽培環境を物理的に安定化させる装置としても、価値が高いと言えるでしょう。

こうした多機能性が、農業とエネルギーを組み合わせた新しい地産地消モデルを可能にしています。

④ SDGs対応・脱炭素農業のモデルケース

太陽光パネルを活用した取り組みは、SDGsのうち「目標7(エネルギー)」「目標13(気候変動)」「目標15(陸の豊かさ)」に特に強く関係しています。

再生可能エネルギーと農業の共存を通じて、地域内循環型の経済と環境対策を同時に実現するためです。

また、TEA ENERGYは農林水産省からも営農型太陽光発電の優良事例として選出されており、信頼性の高さも大きな強みとなっています。

企業側はカーボンオフセット・CSRの観点で評価され、農家側は高品質な碾茶を効率的に育成できるという、双方にメリットがある構図です。

まさに、持続可能な抹茶生産を体現する先進モデルといえるでしょう。

持続可能な農業と世界市場を見据えた選択とは

抹茶を軸とした碾茶栽培と再生可能エネルギーの融合は、まさに日本の農業が進むべき未来の姿です。

環境負荷を抑えつつ、高収益・高付加価値な作物を生み出すこの取り組みは、国内外から高い注目を集めています。

ここでは、将来にわたって競争力を持つ農業の条件について、4つの視点から解説します。

① 国も推奨する輸出型農業の未来

農林水産省は2030年までに「農林水産物・食品の輸出額5兆円達成」を政策目標として掲げています。

その中核品目として注目されているのが、抹茶をはじめとする高付加価値な日本茶製品です。

実際に輸出用茶の産地認定制度、HACCP対応支援、輸出バイヤーとの商談支援などが進んでいます。

このような制度的後押しを活用すれば、個人農家でも輸出市場への参入は現実的なものとなるでしょう。

抹茶栽培はまさに「政策と市場が交差する」注目領域なのです。

② SDGsと親和性の高い抹茶生産

持続可能な開発目標(SDGs)の観点からも、抹茶の生産は時代に合致しています。

とくに脱炭素、自然環境保全、地域活性といった要素を同時に実現できるモデルであることが大きな強みです。

営農型太陽光発電との組み合わせにより、「再生可能エネルギーと共に育つ作物」としての存在感が増していくことは間違いありません。

特に海外においては、消費者側も「環境に配慮された食品」への評価が年々高まっており、価格よりも価値を重視する傾向が顕著です。

農業が環境問題の解決手段になり得るという希望が、ここにあります。

③ 日本の茶農家が担うグローバル供給の一端

世界的な抹茶のシェアは、中国が圧倒的1位で韓国がそれに続きます。現状、日本のシェアは微々たるものです。

しかし抹茶の「本場」は日本であり、品質・安全・文化的背景を含めた総合的なブランド力は他国の追随を許しません。

世界市場からは、日本茶の持つ安心・信頼・誇りが強く求められているのです。

その供給者としての使命とビジネスチャンスが、いま日本の茶農家に到来しています。

これは単なる農産物の輸出ではなく、「文化価値の共有」でもあるのです。

④ 若手農業者や企業にとってのチャンス

新しい農業スタイルとして、碾茶+再エネモデルは若手農業者や異業種企業からの注目を集めています。

たとえばIT出身の新規就農者が、ドローンやIoTを活用して碾茶栽培を効率化する事例もあるそうです。

また、大企業がESG投資の一環として、TEA ENERGYのようなモデルに参画する動きも始まっています。

農業が「守られるもの」から「選ばれる事業」へと進化している今、抹茶市場は未来への入口といえるでしょう。

こうした多様な参入が、日本の茶業全体を再活性化する原動力になるはずです。


世界で拡大を続ける抹茶市場は、日本の茶農家にとって大きな可能性を秘めています。

煎茶市場の縮小やコスト高騰に悩む中で、収益性と安定性を両立する「碾茶栽培」は有力な選択肢です。

さらに、TEA ENERGYが提供する営農型太陽光発電との連携により、初期費用の負担を抑えながら、栽培環境を整えることができるのも大きな魅力です。

抹茶の海外需要が伸びている今こそ、日本の茶農家が世界とつながり、誇りあるものづくりを継続するための転換点だといえるでしょう。

「品質 × 持続可能性 × 輸出」という3つの軸を支える新たな農業のカタチが、すでに始まっています。

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